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L'art de croire             竹下節子ブログ

ウクライナの戦況に思う

10月初め、ニュースチャンネルを開くたびに、フロリダの台風被害、この冬の耐寒対策(暖房節約のための防寒ウェアなど)、そしてもちろんロシアのウクライナ4州併合と、プーチンの演説を神妙に聞く政府関係者と熱狂するロシア市民の映像、プーチンは本気で戦略核を使うか、という話ばかり。いろいろな人が解説している。

ロシアの核弾頭数は世界一だが、ほとんどは冷戦時代のままのもので使い物にならない、しかし少数の精度の高いものはある。
核兵器は抑止力だけでなく最初に実践に使ったのは日本に対するアメリカだ、今ロシアだけがとやかく言われる筋合いはないというロシアの主張。
フランスの核兵器は、地上ミサイル発射は先に撃ち落される率が高いのでほとんどは原子力潜水艦など海軍がメイン。
ロシアはロシア正教の精神的価値を昂揚して使っている。精神性不在の金権アメリカ主導のグローバリゼーションを激しく批判。
etc,etc...

四州併合だから、今度はウクライナ軍こそ他国に侵攻している、という構図にして「正義」を担保するというレトリックのようだが、「併合」宣言すれば自分のものとか、侵攻しても「勝てば官軍」とか、今までの歴史で嫌になるほど繰り返されてきた。

イギリスとフランスの百年戦争(14-5世紀)の終りに近い頃、イギリス軍をフランスから追い出す、という神の使命を受けたジャンヌ・ダルクのことも思い出す。あの百年戦争こそ「ナショナリズム」の誕生だと言われている。
それまでは、領主同士や賢慮者の覇権争いがある度、略奪され戦火にさらされたのはずっと土地に根付いた人々でしかなかった。

百年戦争と言っても、英仏の王室は既に婚姻を繰り返していた。フランスの方が気候も温和で国土は豊かで、大陸だからさらなる領土拡張の可能性も大きい。もし英仏戦争でフランスが負けていたら、英国王はフランス王としてパリを首都として、今の英国も含む「大フランス」ができていたのに、と悔やむフランス人さえいるくらいだ。
英国王が姻戚などで得たフランスの領土の領主としてフランス国王と封建関係にあったことが百年戦争の遠因にもなっている。

そもそもノルマンディ領主のウィリアムが11世紀にイギリスを征服してイングランドの王朝を開いた。それ以来イングランドの王朝文化はフランス語とフランス文化がベースになった。
と言っても、ウィリアム征服王も、ゲルマン民族(アングロサクソンもゲルマン民族と同じルーツ)と北方バイキングのミックスだし、「ギリシャ=ローマ文化とユダヤ=キリスト教」がルーツと語る「フランス」のアイデンティティとどう関係しているのか分からない。
百年戦争以前には、いやジャンヌ・ダルク以前には、フランスで生まれたり暮らしたりすることの方が多いイギリス王が主流だったし、農民たちにはそんなことは関係ないし、領主がだれであろうと、農作物の取り立てや飢饉を生き延びることでせいいっぱいだった。

それに引き換え、日本は「島国」だから「元寇」を神風で追い返したなどというストーリーもあるけれど、その「島国」内部での覇権争いは他のところと同じようにすさまじいものだった。
突然マンガの話になるが、ビッグコミックオリジナルに連載の「卑弥呼」(原作はリチャード・ウー)を時々読んでいる。でも、もう人物相関図が複雑で、人物名も、西日本と九州、四国に渡る様々な国(那の国、穂波の国、日下の国、暈の国、山社、出雲etc..)の位置関係や勢力図を覚えられなくてなかなかついていけない

「衣食足りて礼節を知る」という言葉もあるけれど、衣食足りれば、ますます他者の搾取に向かったり覇権を広げようとして「侵攻」する勢力が今の世界地図や国境を作ってきたのかと思うと、暗然としてしまう。




by mariastella | 2022-10-11 00:05 | 時事
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竹下節子が考えてることの断片です。サイトはhttp://www.setukotakeshita.com/
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