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L'art de croire             竹下節子ブログ

イエス・キリストとメルキゼデク

先日のMEPの講演の際に購入した本で、今のインドのキリスト教に大きな足跡を残したアンリ・ル・ソーの唱えた「コスミック・テスタメント」について、その根拠を探った。

彼は最後まで「カトリック」で、ヒンドゥー教に改宗したわけではなく、むしろイエスの「新約」こそ、コスミックな神との関係だという立場だ。イエスは、ユダヤ教の最初の祭司であるアロン(モーセの兄)の系統ではなく、その前のメルキゼデクの系統だというのだ。

その根拠は、一神教の祖とされるアブラム(後にアブラハム)が戦いに勝った後の記述だ。

「また、サレムの王メルキゼデクがパンとぶどう酒を持って来た。彼はいと高き神の祭司であった。

彼はアブラムを祝福して言った。/「天と地の造り主、いと高き神に/アブラムは祝福されますように。

敵をあなたの手に渡された/いと高き神はたたえられますように。」そこでアブラムはすべてのものの十分の一を彼に贈った。」創世記14,18-20

アブラハムがまだ神の啓示を受けていないとき、すでに「いと高き神の祭司」メルキゼデクは存在した。

その後、ユダヤ教は、ユダヤ人共同体の唯一神を崇める宗教になったけれど、律法遵法主義になっていたその社会に生まれたイエスは、いわば異端として捉えられ殺されるが、復活した。そして昇天するとき、すべての人間を視野に入れることを弟子たちに言い残した。

「あなたがたの上に聖霊が降ると、あなたがたは力を受ける。そして、エルサレム、ユダヤとサマリアの全土、さらに地の果てまで、私の証人となる。(使徒言行録1,8 )」というものだ。

この言葉によって、イエスの「福音」はユダヤ共同体から外に出る。


初期キリスト教の「ヘブライ人への手紙(,19-20) 」の中にもメルキゼデクが出てくる。


「私たちはこの希望を、魂のための安全で確かな錨として携え、垂れ幕の内側へと入って行くのです。

イエスは、私たちのために先駆者としてそこへ入って行き、永遠にメルキゼデクに連なる大祭司となられました。」


というものだ。

旧約のダビデ王の頃にも、詩篇で言及されるところがある。


ダビデの詩。賛歌。/主は、私の主に言われた。/「私の右に座れ/私があなたの敵をあなたの足台とするときまで。」

あなたの力強い杖を主はシオンから伸ばされる。/「敵のただ中で支配せよ。」

あなたの民は進んで身を献げる/あなたの出陣の日に。/聖なる輝きを帯びて/曙の胎の中から若さの露があなたに降りる。

主は誓い、悔いることはない。/「あなたは、メルキゼデクに連なる/とこしえの祭司。」(詩編/ 110, 1-4)


これだと、最初から、ユダヤの神の祭司は実はアロンの系統でなく、とこしえの祭司であることになる。

分かりにくいかもしれないけれど、この詩篇ではダビデの神は、「とこしえの祭司」を自分の右側に座る主としてダビデ王(人類)に与えたわけで、それは後に昇天したイエス・キリストが昇天して神の右に座す、ということと結びつく。

とまあ、こういう神学的正当性を掲げて、ル・ソーらはじめ、悠久のインドに魅入られたキリスト者たちは、ヒンドゥの聖者らとともに、自分たちも宇宙的な一体性の中で神に仕えているとしたわけだ。

この共同体アシュラムについてもっと日本語で分かりやすく書いたものがネット上にないか少し探したのだけれど出てこなかった。アンリ・ル・ソーという名前の検索自体、日本語では画家のアンリ・ルソーばかりだった。ル・ソーのルは定冠詞のLeで画家のRousseauとは全く違うのだけれど。


ル・ソーのサンスクリット名のアブヒシクタナンダで検索すると一つこういうのが出てきて、イギリス人がカトリックに改宗して宇宙的神秘主義にはまっていく例がよく解るけれど、英語の自動翻訳か何かのようで、日本語の順番も変だから要注意だ。一応参考に挙げておく。


ビード・グリフィスの生涯について



(MEPでの講演)



https://spinou.exblog.jp/32768830/




by mariastella | 2022-10-16 00:05 | 宗教
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竹下節子が考えてることの断片です。サイトはhttp://www.setukotakeshita.com/
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