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L'art de croire             竹下節子ブログ

闘牛を禁止すべきかどうか

フランス議会で、左翼連合が、南仏では今も盛んな闘牛を禁止する法案を提出したことでいろいろな意見が飛び交っている。

私は個人的には、血を流すとか殺すとかいうのはビジュアル的に嫌なのでもちろん観たこともないし、血が流れなくとも、プロの選手が反則してぶつかって負傷することも普通であるようなサッカー試合の大スタジアムで人々が熱狂、興奮するようなシーンも苦手だ。

でも、いかにも今の「キャンセル・カルチャー」風の闘牛一律禁止案にも違和感をおぼえていた。

先日、『コリーダの哲学』という本を出した哲学者の話を偶然聞いて、違和感の言語化ができた気がした。

彼の話を要約しよう。

フランスの統計では闘牛廃止賛成は75%と多数だけれど、実際に闘牛が行われている地方では闘牛存続派が75%なんだそうだ。

その地方ではまだカルチャーとして生きている。

あらゆる文化や伝統は「普遍」でなく、いつか絶えるけれど、「自然死」とそうではないものがある。

10年前にスペインのカタルーニャで闘牛が廃止されたのは、もうすでにその地方ではほとんど闘牛が行われていなかったから「自然死」のようなものだが、今の南仏では民衆のカルチャーとして機能している。それを無理やり廃止すると弊害の方が大きい。でもいつかは南仏の闘牛も自然死を迎えるだろう。

闘牛用の牛というのはこれ以上ないほどの理想的なエコロジー環境でのびのびと育てられている。その育牛に従事する人の誇りと責任も尋常ではない。

そういう雄牛だからこそ、ハンディとして矢を刺された後でも、向かってくる。たいていの動物は傷を負わされれば逃げるのが本能だが、雄牛はますますテンションを挙げて猛烈に突進してくる。まさに死闘であり、本気で勝とうとしている。闘牛士がその角を交わすのも命懸けだ。「一騎打ち」とか「決闘」とか、「命を懸けた戦い」に人は興奮する。それは死刑執行だとか一方的なリンチなどの見世物とは次元が違う。

倫理的に許されないことを理由に伝統を禁ずる流れはある。アフリカでの女性器切除とか中国の纏足などもそうだろう。でも、それにも例外はある。「妊娠中絶」のように、倫理的には問題があっても、合法化される流れもあるのだ。決して単純なものではない。

闘牛士の方も、実際に負傷したり死に至ったりする可能性はある。それでも、「美しい舞台衣装」を着て、突進する雄牛を間一髪でかわす体の動きの「型」を美学にしている。踊りの「振付」と通じるが、潜在的な死の危険を想定する振り付けとは単なる「型」ではない。「攻撃をかわす」という目的、機能を最大限に追求したものだ。


(私は楽器や精密機械の機能美が好きだ。その意味で、命をかけた闘牛士の華麗な動きの「美」が芸術の域にあることも納得できる。闘牛士は牛の命とも同時に対峙しているわけだが、それは屠殺場などとは真逆のものだ。)


もし今、法律で強制的に闘牛を禁止したら、もう闘牛用の牛を育てる伝統がなくなり、場所も人もなくなり、エコロジー的に打撃となるだろう。

今は、ヒューマニズムでなくアニマリズムが席巻している。

自分はペットを含む「動物虐待」を心から憎んでいる。自分の犬を愛しているが、それでも犬を人間として扱おうとは思っていない。なぜなら、そうしたら、いつか人間を犬のように扱うかもしれないからだ。

というのが、話のしめくくり。

なるほどと思った。


私は猫好きでうちの猫を子供のようにかわいがっているけれど、もし、うちの猫と見ず知らずの人間の子供のどちらかを救うことができるという局面に出くわしたとしたら、迷わずに人間の子供を救うことはまず確かだ。多分人間としてのDNAが正常に機能するからだろう。


今のディープエコロジーやらantispecism(人間と動物などの区別をしない主義)には宗教原理主義的なミリタリズムがある。それに耳を傾けすぎると、本当に肉食なんてできなくなって、ビーガンになってしまうだろう。


ライオンには草食を強要できない。


by mariastella | 2023-01-26 00:05 | 時事
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竹下節子が考えてることの断片です。サイトはhttp://www.setukotakeshita.com/
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