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L'art de croire             竹下節子ブログ

退役将校の祈り

前に引き続き、12月初めのサロンで買った本の紹介。
「19-20世紀における神への希望の証し人」というタイトル。

退役将校の祈り_c0175451_03435320.jpeg
取り上げられているのは各種の「ご出現」だとか聖人の話とか、ロベール・シューマン、サンテグジュペリ、レジスタンス、ヨハネ=パウロ二世だとか、まあ内容が想像されるようなものなのだけれど、私がどうして興味を持ったのかというと、著者のユーグ・フィリポンがサン・シール士官学校出身の退役将校(大佐)だという経歴の持ち主だったからだ。現在82歳での新刊。ウクライナ戦争や今の情勢についてどう考えているか聞いてみたかった。フランス軍の退役将校たちはほとんど毎日のようにテレビでウクライナ戦の分析をしている。
でも、現役時代に広く各地の連帯を指導していたという元軍人で、キリスト教の「三神徳」の一つである「希望」をキリスト者の目で語る人が、今の状況をどう見ているのか知りたかった。彼の目から見て、ウクライナ戦争の「希望ある」出口はあるのだろうか。
最初にその「出口」を聴くと、すぐに「祈り」という答えが返ってきた。で、私はロシア正教の役割や主教の言葉などを例に出して、「祈り」という段階ではないのではないか、と言った。それから、アングロサクソン軍の戦い方、フランス軍の戦い方、ロシア軍のことなど、私が最近分析していることについて聞いてもらったのだけれど、彼の現場の体験に照らしても、私の考えは当たっていると言ってもらえた。

こういう背筋の伸びた感じが「退役将校」のイメージにぴったり。
退役将校の祈り_c0175451_03420032.jpeg

世界に平和が戻ることを願って、友情と共に、と献辞をくれた。
退役将校の祈り_c0175451_03441118.jpeg

著者と話せるこういうサロンは本当にありがたい。実は、もう、自分の残り時間や読書能力の低下(重い本を持ちたくない、活字の大きさや濃さが不十分だと疲れる、場所をとりすぎて所在がわからなくなる、でもデジタル本の長編には別の疲れがある、など)を鑑みて、できるだけ書物の購入を避けている。しかもインターネットのおかげで著者インタビューや書評を読んだり視聴したりできるのでエッセンスは十分に分かる。
それでも、私にとっての一番聞きたいこと、というのはいつも残るので、著者と話すのは貴重な機会だ。
私がすぐに突っ込んだ質問をするので、多分驚いている著者もいるかもしれない。(振り返ると、このサロンでも、アジア人の姿はほぼ見かけなかった。私はアジア人でしかも女性で、しかも、彼らからは若く見えるから、こんな風に率直に質問してくるのは意外かもしれない。でも、だからこそ、好奇心を持ってもらえて、こちらのことを挑発的だとして警戒されないところが便利といえば便利なのかもしれない。)

私自身は、目の前の著者からも含めて「自分がどう見られるか」という関心がゼロなので、自分の外見という実体がない。

前にも書いたけれど、若い時に高名な音楽学者やリラダンの翻訳者や有名作家や比較文学の大家などと個人的に知り合う機会があり、旅行のお供までしたことがあるのに、そして明らかに彼らは私を対等に扱ってくれていたのに、私は自分の問題意識の核心に迫るような質問など一度もしたことがなかった。問題意識が育っていなかったのかもしれないけれど、一番は、彼らに対等に扱ってもらえるように「自分の見え方」をどう演出するかということにかまけていたのだと思う。
今にして分かるのは、年を重ねた方がより貪欲になって、知らない人、別ジャンルのもの、若い世代の人から得られる情報を貴重に思うということだ。「年の功」という言葉があるけれど、年を重ね、自分の蓄積した情報量が増え、問題意識もクリアになり、識別力が高まる、という状況における「功」の本質とは、「自由」なのだと思う。
忖度も必要ないし、マウントも必要ないし、無用な卑下も遠慮も捨てられる。
同世代のシニアの数も多いし、生徒たちや生徒の親たちを通じて広い世代と付き合えている僥倖に感謝するばかりだ。




by mariastella | 2022-12-27 00:05 |
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竹下節子が考えてることの断片です。サイトはhttp://www.setukotakeshita.com/
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