今年はノルマンディのリジューのカルメル会修道女でその両親まで列聖された聖女テレーズ(テレジア)の生誕150年。
幼い頃から文才のあった彼女の手記は修道院長だった姉によって死後すぐに出版されて世界的ベストセラーになり、億を超えるそうだ。その手記は、姉によって19世紀末の傾向のお花畑風に編集されているのだけれど、写真家である姉のセリーヌがカルメル会に来た1894年から死の年までの3年間に撮った修道院内の写真によっても人気になった。テレーズがシナリオを手掛けて主演もした院内演劇の「ジャンヌダルク」の姿も貴重なものだ。
彼女の手記の自筆原稿も公開されているが、各ページに、戦い、敵、勝利、などの「戦闘的」な言葉が出てくる。またイエスに対する愛というより「恋」の言葉もあるし、ユーモラスな表現も多いそうだ。最初の出版時にそれらはカットされたのだけれど、彼女の「戦う姿勢」は充分伝わったらしく、まだ列聖されていない第一次世界大戦の時代で、塹壕の兵士たちはフランス軍だけでなくドイツ軍も、テレーズを「小さな聖女」(聖女ちゃんというニュアンス)と呼んで心の支えにしていたという。塹壕の兵士たちは別に互いを憎んでいたわけではない。皆が本当に望んでいたのは「平和」だった。
真の戦士は敵の征伐のために戦うのではなくて「平和」のために戦うというテレーズの気持ちにインスパイアされた。第一次世界大戦後に復員兵たちはヴァティカンにテレーズの列聖を早めるように嘆願書を出したそうだ。
「薔薇の雨」、お花畑のイメージのテレーズが夭折後100年経ってから「教会博士」の称号を与えられたのは、決して偶然ではない。
人はどこにいても、平和のために、戦える。
下にリンクしたのは Jean de Saint-Cheron 著『女戦士の賛歌 : リジューのテレーズ』という本。ジャンヌ・ダルクの扮装をしたテレーズの写真がかわいい。
(これは予定稿ですが、22日にパリの日本館でコンサートをするポスターを念のためもう一度貼り付けておきます。パリ、パリ近郊にお住まいの方はどうぞ。)