ピエール・ド・ヴィリエという元将軍は、フィリップ・ド・ヴィリエの弟で、マクロンが就任した時に、異を唱えて辞職した人だ。
マクロンより20歳ほど年長で、軍事費をめぐっての対立だった。
私はオランドのリビアやマリへの派兵(そのツケは今になって大きい)に反対だったし、軍事費を減らすということ自体はいいことだと思っていたけれど、あの時、若いマクロンに対して一歩も譲らなかったド・ヴィリエのスタンスには感心した。
私はもともとド・ヴィリエ将軍のファンだった。
その彼は、リタイア後に次々と本を出しているが最近の"Paroles d'honneur"は「若者への手紙」という副題がついている。時間がないので説明しないけれどこんな感じで、私はいいなと思った。
Il y a deux façons de voir la situation actuelle : soit se complaire dans le constat, il est vrai cruel et inquiétant ; soit surmonter ce dernier et chercher des solutions, faire confiance aux trésors de notre génie français. Vous, les jeunes, êtes l’avenir de la France. Vous êtes aujourd’hui en demande d’humanité et de fermeté, d’autorité et d’amour, d’exigence et de bienveillance. Vous cherchez votre équilibre, dans une société où les facteurs de déséquilibre se multiplient. Il reste à canaliser vers de justes causes cette attente et cette soif d’idéal. Les plaintes soulagent, mais ne construisent rien de durable.
(現在の世界状況には二つの見方がある。非情で不穏な現実を確認するだけか、フランスが蓄積してきた能力を信頼してその解決策を模索するかだ。君たち若者はフランスの未来だ。(…) 瓦解してゆく社会の中にあっても、正義への道、理想の期待と渇望は残っている。不平をつらねるだけでは、一時の気晴らしになっても、持続するものは何も築けない(抄訳、意訳)
私はこのメッセージが気に入ったのだけれど、壮年の友人に見せたら、まさにここに訳していない部分、人間性と強さ、愛と権威を組み合わせたり、社会的平衡状態が大切だといったりする部分に父権主義的押し付けを感じるし、若者と言っても、若い男を念頭に置いているのではないか、と拒否反応を示された。「フランスの蓄積した能力」というのは私にとっては別にナショナリズムの反映でなく「共和国的普遍主義」だと読めたので抵抗はなかったのだけれど、たとえばマイノリティ・アイデンティティを背負っているような人ならさまざまな含意の押し付けにもなるかもしれず、難しいものだと思う。
でも、ド・ヴィリエは、若者にではなく、高齢者に向けてもメッセージを発している。
そのメッセージは何かというと、インタビューに答えてこう言っているのを聞いた。
「若者の世話になる前に若者の世話をしなさい」
日本では若い世代が高齢者の「老害」をあげつらうことが多いようで、高齢者の顰蹙をかっているけれど、高齢者も、ピエール・ド・ヴィリエのこの言葉をじっくり考えてみればどうだろう、とも思った。
(付録 岸田さんが出てくる)