アンドレ・ヴォシェの『西欧のキリスト教聖地 --- 4c~16c』という本は、まさに宝庫のようだ。
もっと巡礼案内的なものも入っているのかと思ったら参考図書だけでも30ページを超える本格的な研究書だった。(ヴォシェは中世史の歴史学者。)
第一部は「空間のキリスト教化、キリスト教の聖化」だ。

それまで多神教世界だったローマ帝国の版図内を一神教のキリスト教に塗り替えるにあたって、多神教の聖地をキリスト教の聖地に置き換えた。それはある意味でもうキリスト教ではない。そもそもキリスト教は、「聖」の独占と管理によって人々を支配していた政治や宗教権威や権力を否定することで生まれた。
可視化され、システム化され、現存の人物に人格化されるような「聖」や「聖なる空間」を全否定したのだ。
それなのに、ローマ帝国の国教になってから、あらゆる「聖地」をキリスト教化したわけだ。第二部は中世からルネサンスにかけてのヨーロッパにおける「聖」とその地理的な体系化について。

第三部が、聖地の機能、営み、役割について。
切り口の新鮮さといい視野の広さといい、私にとって垂涎の参考書だ。ずっと書こうとしていたけれど、とても手が出なかったテーマでもある。
今は気軽にインタビューを視聴できるのも嬉しい。リンクしておこう。