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L'art de croire             竹下節子ブログ

宮台真司の記事に思う。

『サンデー毎日』の2023/3/26号(p33~35)で宮台真司が田原総一朗のインタビューに答えているのを読んだ。

宮台の本は読んだことがない。ビデオで討論や講演を視聴した記憶はある。夫人がカトリックとかで、カトリック・シンパのイメージは持ったが、特に共感したり役に立ったりということはなかった。

でも、今回、キャンパスで「襲撃」され、実行犯が安倍元首相の狙撃犯と同じく宗教二世で41歳と同じ歳というので、宮台がそれらをどう見ているかは興味深かった。

まず最初に、その世代は「団塊ジュニア世代から始まったロスジェネ世代に属し、引きこもり世代とも重なる」そうで、彼らが大学生になったころから性的退却と「KYを恐れてキャラを演じる」営みが始まったという。性と政治と好きな趣味の話題を避けてコミュニケーション能力が著しく劣化した。彼らが小学生になった80年代半ばに子供の成育環境が急変した。子供の事故に伴う訴訟が相次いだせいで、放課後の校庭での遊びはなくなり公園の遊具が撤去された。外遊びもなくなり、家族以外の大人とのかかわりもなくなった。孤独で「見たいものだけ見る」から学習がなく、同じテーゼを反復するだけ。

これには悲しくなった。私は日本にいないから、日本の若者との付き合いは限られている。フランスに留学したり移住したりするというごく限られた人ばかりだ(その中でも接触するのは、インテリ枠かアーティスト枠かブルジョワ枠の人がほとんどだ)KYとかいじめとか引きこもりの話題は知っているけれど、それが何十年も続くと社会に変化が起きるだろう。

宮台は2015年から、「日本という国は、経済指標と社会指標の両面ですでに終わっている」と言い続けてきたそうだ。以前はそう言うと、上場企業のエリート社員向けのレクチャーでは反発を受けたが、2021年の東京五輪があらゆる分野で日本の終焉を晒したので、今は反発がゼロ。日本人は所属集団のポジション争いにしか関心がないという劣等性があるそうだ。

これにもショックを受けた。でも、その後に続く宮台の提案には、疑問符だらけだ。

正規雇用を全廃しろ、

「春闘の賃上げ闘争をするのは日本だけだ。他国では少しでも給料の高いところにジョブホップしていく」

と言うのだけれど、これってアングロサクソンモデルしか見ていないのでは?

フランスは日本とはまた別の意味で、みなが正規雇用(終身という意味ではない)を目指していたし、賃上げや労働条件改善の闘争ばかりやっている。

「欧州で生まれた共同体自治主義」を評価しているけれど、「欧州」も一枚岩ではないし、先進国内での共同体自治主義には多くの罠がある。


岸田政権の安全保障対策の大転換をお笑いだとして、トマホーク400基の購入を批判するのはもっともだと思う。でもそれに対して宮台の主張するのは「日本の重武装・中立路線」で、それには賛同できない。

「安全保障とは、軍事だけでなく、経済、文化、資源エネルギーを合わせたすべてだ」というのは分かるし、「信頼醸成」が第一というのも分かるけれど、重武装化を可能にする憲法にして装備と戦略を随時変えていく、それが米国追随をやめる唯一のやり方だと言われると…。

また「若者論」に戻って、日本の高校生で自分に価値があると思える割合は6~9% でしかなく、米国や中国では70~80%んだそうだ。自信がないと非社交的になるか、上を見て、横を見てポジションを決める。何かを貫徹する代わりに周囲に適応するだけの流される人間となる。自己信頼がない者には産業構造を変えることなどできない。

これについては、自己防衛のために反知性主義的にふるまうのではなく、「仲間を守る情動の連鎖に掉さして、できるだけ広範に知性的に考えて行動する」ことを推奨していて、宮台は実際に子供たちのキャンプなどを主催しているそうだ。これはカトリック国でもさかんなボーイスカウト、ガールスカウト活動を連想させる。

私はフランスならもう40年も、ずっと子供たちやその子供たちが「若者」になっていくのを見ているし、その親たちともつき合ってきたので、日本の子供のことよりはよく分かると思う。もちろん子供に音楽の個人レッスンを受けさせるという時点で、親がすでに前述したインテリ、アーティスト、ブルジョワのいずれかのカテゴリーというのはあるけれど。子供たちの一人一人の未来というより、環境破壊、エコロジー言説の方が気になる。

で、次からは「エコロジスト」の立場の整理と言説の分析などについて分かりやすく展開してくれているフランスの週刊誌の記事を要約していきたい。


by mariastella | 2023-03-29 00:05 | 時事
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竹下節子が考えてることの断片です。サイトはhttp://www.setukotakeshita.com/
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