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L'art de croire             竹下節子ブログ

エコロジーの現在 インタビュー篇  その6

Q : 宗教は「大きな物語」を語って我々を取り込み、欲望を高めるという人もいます。世界の終りだとか、デカダンスだとか。一方、謹厳で禁欲的なエコロジストたちもいます。

CP : 「物語」は創造力や想像力を刺激します。エコロジーの問題に唯一の回答はありません。農業やエネルギー資源の問題は、気候、地理だけでなく社会文化的文脈にも多くを依存しています。エコロジーを考えるのには多くの想像力とエネルギーを必要とします。エコロジストには、人々の罪悪感を駆り立てて説教するタイプの人がいますが、「自尊」の感情がなければ生活スタイルを持続的に変えることなどできません。悪の深刻さや私たちの開発モデルの暴力性を隠そうとは思いません。それは、他の生き物の完全な商品化、地球資源の際限のない搾取、多様な文化の搾取などに依拠するものです。資本主義はあらゆる分野で苦しみを生んでいます。エコロジーは支配を否定し、多様性を肯定し、試行錯誤しながら別の生き方に移行を目指します。

古いシェーマから一人一人が解放されて、それぞれの方法、それぞれのリズムで、他の人間や自然と、より公正な形でかかわりながらこの地球で共に生きていくというプロジェクトです。このメッセージを学校やメディアや企業や政治の世界に届けることができているのならすばらしいことです。


FE : 一つのストーリーが人々を動機づけるのは確かですが、具体的で効果的な要素も必要とされています。個々のイニシアティヴが他の人をインスパイアして、雪だるま式に広がると思います。シリル・ディオンが映画『明日』で紹介したように、いろいろな規模の体験、実績も可能です。カタストロフィを煽るラディカルな言説のリスクは、新しい生き方への移行には要求が大きすぎて実現が不可能だと思わせてしまうことです。


     ・・・


「悪」を正していこうと思うためには「自尊」の感情が必要だというのは納得できる。「千里の道も一歩から」とはよく言ったもので、身近なもの、自分の生活範囲でできる小さなことからはじめて、それを共有する試みが少しでも具体的な「成果」を生むなら励みになるというのも理解できる。


国や自治体がエコロジカルと称して一方的にリサイクル方法などを押しつけたり変えたりしてくることもあるけれど、その多くは、実は、さまざまな目先の「利権」から自由ではないだろうし、時には明らかな齟齬も不合理もある。


変な話、今のフランスの国鉄系郊外列車では、紙の切符がまだ使われて、降車した後で、出口の改札をに通すのだけれど、その切符は「呑み込まれないで」出てくるのだ。もう使えないから外のゴミ箱に捨てることになる。

その度に軽いショックを受ける。

というのは、もう20年以上前だったか、フランスの理系グランゼコールの学生が日本のJRに「研修」に来ていたことがあって、そのテーマが紙の切符のリサイクルだった。

それを知っているから、えっ、いまだに切符のリサイクルができていないのか、と驚くのわけだ。パリ市内のメトロに使えるカードはあるけれど、もともとメトロは距離的にはいくら乗っても一回は同料金だった。だがパリを出ると距離によって運賃が変わるのでなかなか共通カードができないのだという。ブルターニュで最近、ブルターニュ内ならフリーで使えるカードができたというニュースを見た。それにしても日本の交通系カードのように全国はおろかパリとパリ近郊にさえ使えないカードって。(もちろん定期のようなものはある。ここで言っているのは匿名のカードだ)

けれども、まさか、フランスが単に20年遅れているとは思えないから、何か裏の事情があるのかもしれない。「リサイクル」より優先する裏の事情だ。

どんな政策も少し掘り下げてみると不透明なものばかりだ。

それを思うと、やはり身の回りのささやかなエリアで、浪費を減らし無駄を避け、「もったいない」の感性に裏打ちされた小さなエコロジーが現実的だということなのだろうか。(続く)





by mariastella | 2023-04-18 00:05 | 時事
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竹下節子が考えてることの断片です。サイトはhttp://www.setukotakeshita.com/
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