フランスで、一昔前、同性婚を可能にする法律ができた時、同性婚に反対する保守派が大々的なデモを連日繰り広げたことがある。
そのデモの後で、当時のパリ市長ドラノエ(社会党)が、デモ行進がシャン・ド・マルスの芝生を傷めたとしてデモの主催者に賠償を求めたことがある。
それに引き換え、左派、革新が主導するデモの方は、店のウィンドーが壊されても、ゴミ箱に火がつけられても、基本的におとがめなしとなる。
特に、左派のデモの最後には外国人を含む黒衣の暴力グループが現れて警官やパトカーを襲ったり、店を破壊して商品を強奪したりするなどの狼藉を働く。身柄を拘束されることもあるが、割と早く解放される。居場所コントロールできるアンクレットを数日つけることなどが義務だ。
年金改革反対デモで、チャールズ三世が訪問するはずだったボルドーの市役所の由緒ある建物の扉が放火された。さすがにその犯人は逮捕されたという。修理費は300万ユーロだとか言っていた。(ボルドーはエコロジー対策で進んでいる都市だ。)
こういう場所には監視カメラがあるから「犯人」は比較的特定しやすいのかもしれない。
けれども密集した場所や今回戦争まがいの暴力が繰り広げられた貯水池のような農地では、一部の過激派を特定することは難しいのだろうか。
いや、実際は、フランスの警察は、特に外国から来るブラック・ブロックの暴力団体を警戒し、フランス人過激派も含めてブラックリストに載せているという話を聞いた。だから、その気になればデモの前に、彼らを牽制することだってできるはずだ。
それをしないのはやはり、「暴力的なデモ隊が警官やパトカーを危機に陥らせる」というタイプのメディア操作を行っているのかもしれない。
どちらにしても、現実の「戦争」が起こっていない国で、爆発物が飛び交ったり、「普通の活動家」がそれに巻き込まれて傷を負ったりするのは異常だ。
それでも、フランスは銃社会ではないから、少なくとも一般人が半自動式ライフルを持ち出すアメリカのようなタイプの悲劇はないのが救いだ。