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L'art de croire             竹下節子ブログ

ルネサンスの「自分語り」 (続き)

最初は、医師や患者による「自分語り」が紹介されたのが意外だった。
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最初は、4人の医師の伝記を書いた医師についてだが、たとえば、医学文献の前書きに謝辞があって、有力者の名、メセナの名や弟子の名などが連ねてあって、それによってさりげなく自分のステイタスを自慢しているという。ある植物の根の処方について批判する薬学の本にも、自分はその処方の副作用で苦しんでいる人を治したというコメントもある。
レトリックとしては「自分」を書いてはいけない。
自分語りは自己称賛か、卑下化のどちらかになると考えられていた。「自分」を一人称で書いていいのは、中傷に対する自己弁護の場合か、アウグスティヌスのように、自分語りに道徳的など「教育」的な氏名、目的がある場合だという。

アンブロワーズ・パレの場合は、従軍医として各地を回った時の記録が「旅行記」として残っていて、各地の治療院の様子や、自殺の例や、特定の患者との出会いと治療、回復の過程など話題が多様で、単なる外科医でなく冒険家でもあった。プライベートについて語るわけではない。「パリに帰る」という文からパリに住んでいることが分かったり、ある従軍を「妻の病気」で断っていることぐらいだ。
それでも、観察記の中に、彼自身の疲労や感情のメタディスクールがある。トリノで、死にかけた人の上を馬が踏み越えるのを目撃した時のショックなどが分かる。

さらにおもしろいのは、「闘病記」の登場で、Ulrich von Huttenの梅毒からの生還の記録はフランス語にもすぐ訳された。この人は1490年代のナポリでの戦争で梅毒に罹患したらしく、1500年に顔の痘の症状が出てきた時を「社会から疎外」された「新しい自分」として捉えている。見かけもそうだが悪臭も放ち、社会生活は断たれる。

もう一人、Grünpeek という人の梅毒闘病記があって、こちらは「原因」については書いていないが、菌に侵されたことを、「敵(病気)に侵攻された国「体)」というイメージで表現しているのが興味深い。病んでいる自分ではなく、外部の病と闘っているというスタンスだ。その戦いは、禁欲や小食などで、宗教的イメージも与える。

これらの闘病記の必要性は、「完治した」というメッセージによって「社会復帰」をとげることだ。二人ともヨセフという医師のおかげで治ったという。

なんだか、今、巷にあふれるさまざまな「闘病記」を連想させられる。
日本は特に、「市井の人」のさまざまな「日記」ブログが世界で突出して存在すると言われている。
「闘病記」は特に医学情報より役に立つことがある。

特定の個人の闘病から完治に至るまでの時系列のデータが、主観もまじえて紹介されているのをいろいろ読み比べると、参考にもなるし、助けにもなる。

私が「たかが、肩」で肩関節炎の発症からあらゆる治療を試した記録を残したのも、他の人の役に立てばいいと思ったからで、実際、進行中は記事を通していろいろな人とつながって励まし合ったり力をもらえたりした。

この覚え書きブログだって、「自分語り」は透けて見えるわけだし、それがどういう意味を持つかなどと、考えさせられた。

16世紀の「自分語り」の研究者の発表からこのような今日的な問いを投げかけられるとは想像もしなかった。じっくり考えることにする。

下は別のセミナーの案内。アイデンティティについてで興味があるが、スケジュールが立て込んでいて到底無理だった。
ルネサンスの「自分語り」 (続き)_c0175451_05453825.jpeg


by mariastella | 2023-04-22 00:05 | フランス
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竹下節子が考えてることの断片です。サイトはhttp://www.setukotakeshita.com/
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