これも、弁護士による捜査の物語。
安藤サクラは黒木華とちょっと雰囲気が似ている気がする。自然体であっさりした感じ。委員長風味はないけれど。
この映画、初めの出会いの場面がとっても不思議で、木が倒れて死ぬシーンが怖いし、その後もっと怖いシーンも出てくる。
驚いたのは、弁護士が在日だということがしつこく出てくること。帰化をして、資産家の娘と結婚していて子供もいるのだけれど、わざわざ「在日も三代目だったらもう日本人だ」とか、差別的なことを言われているし、戸籍交換の犯罪者に刑務所で面会したら、すぐに在日だと言われる。顔を見ればすぐ分かる、「一目見て在日っぽくない在日というのがすなわち在日っぽいということ」だと、訳の分からないことも言われる。そして、弁護士と囚人という立場での面会自体を「朝鮮人のくせに見下し」ていると言う。
弁護士の妻は結局浮気していることが分かるのだが、その根底にはやはりどこかに夫の出自に対する「見下し」がある。
在日や外国人へのヘイトデモのシーンまで登場する。北朝鮮拉致を非難するプラカードもある。
これらが、謎の中心にある「死刑囚の息子」というスティグマを背負って消すことのできない息子、しかも父と顔がそっくりという息子の苦悩とつながっている。
すでに息子が大人になってから父の死刑執行が知らされて、遺体や遺品を引き取るかどうかの打診が来るという場面もある。
「在日」「人殺し」「人殺しの子」「囚人」と、いろいろな差別とその抑圧がからみあっているのだ。
うーん、私は死刑そのものの反対論者だし、ましてや死刑囚の家族への差別など論外だし、その深刻な状態が、在日の鬱屈とつながることの強調も違和感がある。
肌の色の違ういわゆる人種差別や外見で分かる障碍者差別などとちがって、古来からの混血もある同じ東アジア人の朝鮮人や、本人はまったく「普通」「人並」であるはずの「犯罪者の家族」への差別など、もちろん社会的、歴史的な経緯があるとはいえ、本来「不自然」でこじれた差別ではないだろうか。
この映画の原作は平野啓一郎さんなのだそうだ。
彼の「意識高い」系のあり方が、こういう差別問題の弾劾を通奏低音に組み込まずにはいられないのだろうか。
20年以上前に望まれて対談した時の若い彼のまじめな感じを思い出した。
映画の展開はよくできているけれどストーリーとしてはなぜか後味が悪かった。