フランスが「戦勝国」になったわけ
ウクライナ情勢の分析についてインタビューを受けていたロシア系(父がグルジアからの移民)アカデミーメンバーの歴史家エレーヌ・キャレーヌ・ダンコス(93歳)がおもしろいことを言っていた。
第二次世界大戦でドイツ戦に敗れて占領されていたフランスが、戦勝国として連合国の一員となって国連の安保常任理事国になった理由については、ドゴールの「自由フランス」とレジスタンス、ノルマンディー上陸作戦にも参加して、パリ入城、パリ解放をしたイメージと共にこれまでも分析されてきた。 ロシア(ソ連)の方は、多大な犠牲者を出しながらナチスドイツを破ったということで、実質の「対独勝者」とされてきた。 そんなスターリンからすると1940年にドイツ軍にあっさりと白旗を挙げて首都を明け渡したようなフランスと同列にされたくない。(これも今のウクライナ戦争と同じ葛藤の中、ペタン将軍は全面戦争を避けることで多くのフランス人の命を救ったという側面がある) ところが、凱旋したドゴール将軍はスターリンを「圧倒した」という。 当時を記憶しているダンコス女史によると、ドゴールは巨体で恰幅もよく、スターリンを文字通り「見下ろし」て圧倒したのだという。 それを聞くまで、スターリンが小柄だとは知らなかった。ソ連の独裁者としてヒトラーよりも多くの犠牲者を出した人だから、どちらかと言えば大きい人という印象だった。ところが、スターリン(彼もグルジア出身)の身長は160cm代前半だったそうだ。対するドゴールは1m96と言われているので実に30cm以上の差がある。戦時の国家リーダーの男としては、図柄的にも、実際の対面の場面でもそれが致命的な「差」となっても不思議ではない。相手が女性なら服装も違うけれど、どちらも「軍服」というテストステロン全開の服装だから、「上から目線」が決定的になったのだ。 あり得る話だ。ドゴールが戦後のフランスで「英雄」として崇まれたことにも、彼のフランス人平均をはるかに超えた体型がプラスになっただろう。 フランスはその後も、ドゴールの後だからポンピドーは小柄に見えたが平均フランス人より背が高かったし、次のジスカール・デスタンも痩せていたが190cmくらいあり、ミッテランは平均的だったが、シラクも190 cm級、シラクのもとのヴィルパン首相も190cmを超えていて子供たちはモデルをやっていた。 核兵器を開発しNATO軍から抜けたドゴールは核保有国としてもフランスの地位を固めたけれど、シラクの後で、170cmに足りないことでいろいろ揶揄されたサルコジがNATO軍に復帰したのも皮肉と言えば皮肉だ。 その後はサルコジよりは背が高くても170 cm 代前半のオランドやマクロンが続いた。マクロンの最初の首相エドワール・フィリップは194 cm、次の首相カステックスも大柄だった。小柄だったというナポレオンは体格の良い近衛兵を侍らせていたというから、「上」であれば、「下」の者はむしろ大きい方が効果的なのかもしれない。はずだ 平時であれば元首の身長など意味がないはずだけれど、外交の場の微妙な緊張状態でふたりの国家元首が並んで握手するとか並んで会見する時などにはやはり「見た目」が「コミュニケーション」の一部となる。特に男同士だとみながスーツにネクタイという制服風の装いとなるから「体格や容姿」の「優越」が外交のツールとなってもおかしくはない。 プーチンやゼレンスキーが共に小柄であることは、長引くウクライナ情勢のプロパガンダ合戦にどう作用しているだろう。 先月、アメリカのブリンケン国務長官が中国を公式訪問するという外交上の大事件があった。習近平と何時間も会談を重ねた。 印象的だったのは、2人が何度もカメラの前で並んで立った時、習近平の方が微妙に背が高かったことだ。 アメリカ人とアジア人と言えば、マッカーサーと昭和天皇の並んだ写真とかトランプと金正恩とかのイメージで、アメリカ人の大きさが何となく刷り込まれているから、習近平の背の高さは彼の外交の武器になっているなあと思った。 熊のプーさんに模されるのを嫌ってプーさんの画像をSNSで禁止したなどという話も聞いたけれど、あんな強面の独裁者が「プーさん」面をしていることで、むしろ穏やかで温厚でというイメージにつながるのはプラスですらある。「大人(たいじん)の風格」というやつだ。ゼレンスキーやプーチンなどとは別格だという演出。(でも中国学の専門家から、中国人のあの手の顔は実は一番危険なのだと聞いたけれど。) 中国に行ったのがブリンケンでなくバイデンだったとしたら、バイデンの方がわずかに背が高い(バイデン183㎝、習近平180cmとか言われている)絵柄になったろうなと思う。 まあこういう数字は憶測のものが多いから当てにならないけれど、そしてシークレットシューズなどいろいろな小道具もあり得るのだけれど、今は誰もがスマホで政治家の写真を撮ってしまう時代、そして素人でも自撮りを修正するような「ルッキズム」の時代だ。体重は管理できても筋肉は鍛えられても、身長や骨格の「見た目」までを無言のうちに先入観に組み込まれる政治家って、鋼のメンタルも必要かも、と思ってしまう。(見た目でいえば、やはり「肌の色」への偏見が人種や性別への偏見より根強いのが実情という気がする)
by mariastella
| 2023-07-31 00:05
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