フランスという国は、いくら革命だとか、共和国だとか、政教分離だとか言っても、ローマの真ん中に、五つもフランスの教会を持っているのだから、部外者には不思議だ。
たいていは、中世にフランス王が土地を買い、建設し、それ以後いろいろあっても、結局は、政教分離以来、建物の管理や維持、財政をフランス国家が負担して維持している。それは政教分離法以前の全ての国内教会と基本的に変わらない。カトリック教会はその無償の店子ということになるが、司祭や信徒が減ってくると、使われなくなるので、所有者である市町村が売却してしまったり、別の目的の施設にしたり、廃墟のようにうっちゃられたりすることもある。
ローマの五大フランス教会は、フランスの修道会やカトリック組織が運営を任されているようだ(たとえばサン・トリニテ・デ・モン教会は2016年以来エマニュエル会が運営する教皇庁とフランス政府が合意した)。
21世紀の大統領も、オランドは拒否したが、サルコジやマクロンは喜んで、これらの教会をはじめとしてバジリカ教会の名誉メンバーに就任されるなどしている。
パウロ六世はジャック・マリタンやジャン・ギトンと懇意だったし、ヨハネ=パウロ二世はアンドレ・フロサールと懇意で、リジューのテレーズへの崇敬が深かった。
フランスがカトリック教会の「長女」と呼ばれるのは八世紀にピピン三世が教皇庁に土地を寄進したことで教皇領の基盤ができ、その息子のシャルルマーニュが神聖ローマ帝国皇帝とされたことに由来する。
おもしろいのは、フランス国王もランスでの戴冠式の聖油塗布以来「教会の長男」という称号を持てたことで、ランスで聖油を塗油された時に、フランス王は「Dehorsの司教」となる。つまり、カトリック教会の司教区ではなくその「外」の司教ということで、同等の権威を獲得していたということだ。
宗教改革の時代、プロテスタントだったアンリ四世がカトリックに改宗してカトリック貴族や聖職者に対峙した時、「私はあなたたちよりもカトリックだ」と言ったのが知られている。
たとえば日本が外来宗教である仏教の「本場」などに、日本による日本語の宗教施設をいくつも持ち続けているなど想像できない。(新興宗教は別として)。
ドゴールはロシア(ソ連)に、ロシアとフランスはヨーロッパ大陸の東西の端に位置すると言ったそうだが、二国ともローマカトリックやギリシャ正教をツールとして独自の権威を打ち立てた。イタリアも、王制、ファシズム政権や共産党拡大、今の右翼政権などいろいろな時期を通して、ローマ遺跡もカトリック施設もしっかりと把握している。
西洋とか欧米と言っても複雑だ。