これを書いているのは、7/5、フランスでの「暴動」が日本でも報道されてから一週間ほど経った。2005年の「暴動」と同じで、アングロサクソン・メディアが煽るものだから、フランスは内戦状態だと恐れて、パリのホテルのキャンセルが相次いだらしい。
アルジェリア人のシングルマザーの家庭に育った17歳の少年(メルセデスを無免許で運転中に警官による職務質問を拒否して撃ち殺された)の死がきっかけで、ジョージ・フロイト事件で火がついたアメリカのBLM運動と重ねて報道されがちのようだ。
「暴動」に集まった若者の平均年齢は17歳、「警官を殺せ!」などと叫ぶ者もいるが、その多くはブティックやタバコ販売店を襲撃して、スーパーが襲われているのを窓から見た母親が、「降りていって何か盗んで来なさい」と言うケースも報告されている。逮捕された若者の90%は外国籍の移民などと言われている。
ナンテールと言えば、フランス1リッチな県オー・ド・セーヌにあり、フランス1のビジネス街ラ・デファンスも含んでいる。そんな場所でも、シテと呼ばれる移民住宅がありゲットー化している場所があるわけだ。
いろいろな言論人が「暴動」について解説していたが、ユニークなのはドリス・ガリ(Driss Ghali)だった。
彼によれば、これは移民がフランス人を攻撃しているのではなく、フランスとフランス人とは旧植民地と本土の「先住民」で、今のイスラム過激派などの移民は、神の国の旗を掲げた「開拓民」、ナショナリストだというのだ。17世紀にピューリタンが、「神の国」建設をめざして先住のインディアンをことごとく征服していったのと同じだという。
発想の転換がすごい。
彼は理科系でありながらパリの政治学院も出た国際政経済学者の作家でもあるが、他のエリートなら絶対に言えないこんなことを堂々と言えるのは、自分がモロッコ出身のイスラム教徒だからだ、と言明する。
この10年来、住んでいるのはブラジルで、それはモロッコの太陽が忘れられないからだという。ヨーロッパと距離を置くことで見えてくるものもあるだろう。フランスに戻る度に、アメリカ文化に汚染され、消費以外に基準がなくなり、EUに主権を譲ってフランスを失っていく様子に茫然としている。フランスの文化やライフスタイルは人類の貴重な財産なのに、フランスはそれを手放し続けている。
そして、反フランスを堂々と掲げる「移民」たちは自分たちの確固としたアイデンティを押しつけようとしている。
暴動を起こしても、反「アラブ差別」や「多様性」からエコロジーまでが彼らを間接的に擁護する結果になっている。
フランスの共和国主義の名残で、医師や大学教授になる「アラブ人」もたくさんいるのに、スポットライトを浴びるのは、サッカー選手、ラッパーばかりで、話題になるのは麻薬カルテルばかり。
1789年の革命は神を放逐し、1968年の革命は「義務」の概念を放逐し、「快楽」に変えた。今は「フランス」の文化と文明が放逐される第三の革命となっている。
「人権」とはセキュリティ、アイデンティティのリスペクト、ガバナンスの3つを必要とする。
ドリス・ガリの言っていることは、極右の論説とは全く違う。
「人権」が言葉だけになっている現状は恐ろしい。