Arteのドキュメンタリーで1959年に起こった二つのことを別々に視聴して感慨を覚えた。
一つはこれ。1959念にモスクワでUSA博覧会が開催されて、アイゼンハワーの副大統領だったまだ40代のニクソンがモスクワに来た記録。
起こったり笑ったり感情を出してのやりとりがビデオ撮影されていたり、めずらしいシーンがたくさんあって、何より、冷戦のさなか、私の子供の頃は、アメリカはアイゼンハワー、ソ連はフルシチョフという二人の禿げたおじいさんがにらみ合っているというのが「世界」のイメージだったから、その頃にニクソンがいたのか、こんな博覧会をやっていたのか、というのが驚きだ。
アメリカのテクノロジーを見せるために、自動で駆け回る電気掃除機ロボットが披露されて、えっ、ルンバみたいなものがもう存在していたのか、と思ったが、実は隠れてリモコンで操作していた人がいたのだそうだ。双方にスパイもたくさんいて、ばかし合いのような側面もある。ペプシコーラがはじめて紹介された。
今のロシアでもこんな博覧会の発想はあり得ないとも思うし、何よりもこの一年後にはニクソンとケネディが戦って、ニクソンは敗れた。そしてキューバ危機が起こって、ケネディは暗殺されて、という経緯を考えると、この1959年の記録はまるでフィクションのようだ。事実は小説より奇なり、と言ったところか。
同じ年の末、品川から新潟に列車で向かった900人以上の在日朝鮮人が、赤十字を腹に描いたソ連の船二隻で北朝鮮に「帰還」した。
この「帰還事業」はその後四半世紀も続いたので、私も記憶している。
「帰還」者はひどい差別を受けたようで、いろいろな悲劇が生まれた。
10万人近くが「帰還」したそうだ。拉致事件もあった。
韓国の軍事政権はなくなったし、目覚ましい経済の発展はあったけれど、「朝鮮戦争」はまだ解決していないし、日本海に北朝鮮のミサイルが飛んでくる。
金融軍産コングロマリットの「成長」のために、プロパガンダが飛び交っている。
1959年に起こった出来事ふたつのドキュメンタリー、あまりにも別の世界、そして60年以上経った今も決して、より平和になってはいなくて、本当の意味でより豊かにさえなっていない状況を思うと嘆息するばかりだ。それでも、一定の距離を置いてこうして記録を見ることができる時代に感謝したい。
大切なのは、何を学び取るか、だろう。