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L'art de croire             竹下節子ブログ

100歳の誕生日ミサ

10/22は、最高齢の友人オディールの100歳の誕生日だった。Bonne Mamanと呼ばれる彼女の子供、孫、ひ孫たちがお祝いをしたのに招かれた。彼女とは10年近い付き合いで、このブログにも何度も出てくる。孫の一人であるブルノー君へのインタビュー記事も書いたことがある。
場所は彼女の4人の娘の一人が住むヴェルサイユの中心部にあるエルミタージュというカトリック系施設で、講演やアトリエやいろいろなイベントがあるところ。チャペルもあるし、多目的ホールもいくつもある。
朝から雨だったのに午後は晴れた。エルミタージュの敷地に入って外を見たところ。
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この日は、ヴェルサイユ宮殿に爆弾を仕掛けたといういたずら電話のせいで観光客らが外に出された。パレスティナ紛争が激化してから続けて7回目だ。テロの非常態勢でデパートでも手荷物検査がある物騒な空気の中・・・、ここは完全な別世界だった。
巷では、パレスティナ紛争が飛び火して、過激派のテロが起こっているし、ムスリムとユダヤ人の対立も目立っている。日曜にミサに行くようなキリスト教信者はますます少なくなりフランスの司祭の数は10年前の半分。移民が増え、高齢化も進み…という世相の中で、何の検問もなし、私をのぞいて全員がコーカソイドで、貴族やブルジョワで城やチャペルを持っていて毎日曜にミサに行くタイプがマジョリティ。
オディールの娘の一人は今はリタイアした医師だが、何と孫が17人もいるのだそうだ。(私は明らかにオディールと血のつながりがないたったひとりの出席者だが、オディールからじきじきに招待されたただ一人で、私が着く前にも私が無事に来れるかずっと気にしていたというので、むしろその特別扱いで肩身が狭いほどだった。)
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シスターが2人歩いている。もちろんオディールのために集まった人。
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これがチャペル。
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扉の上に、prier souffrir agir とあった。祈る、苦しむ、行動を起こす、という意味で、もとは、「煉獄の魂のために」という古い言い回しなのだが、今は、「祈ったら祈りっぱなしではなく、その後は自分で努力せよ」というニュアンスらしい。でも、動詞を三つ並べるなら、prier aimer espérer (祈る、愛する、期待する)くらいの方がほっとするのに。
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中は明るくシンプル。子供が怖がりそうな磔刑像もない。昇天のイエスのイメージ。

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式次第も用意してあり、ボンヌママンの100歳のため、とある。
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車椅子に座っているのがオディール。付き添っているのは彼女の4人の娘のうち末娘で、マドンナハウスという活動修道会のシスターだ。
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お兄さんのリュドビックと共に司式するブルノー君。2021年はじめに日本の友人の追悼ミサを上げてもらった。女の子たちはオディールのひ孫たちで聖歌を歌うために座っている。
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このミサで一番かわいいと思ったのは、15ヶ月の赤ちゃんのハイハイパフォーマンス。この写真ではまるで祭壇の前で土下座しているように見えるかも。
この子はオディールのひ孫のうちでもっとも小さく、この家族の集まりでの最年少。つまり、100歳と1歳というわけで、一世紀の差。それだけで、命のつながりの不思議を感じてしまう。
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ここでは遊び始めている。向こうにいるのがリュドビック。後ろ姿はリュドビックやブルノーのおかあさん。赤ちゃんは彼女の妹の孫。彼女の娘の一人はベネディクト会のシスターで終生修道院から出ないので、オディールの家族で唯一の欠席者しなった。でもさぞや祈ってくれているだろうからそのおかげで雨がやんだのかもしれない。
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変な話、今まで、家族や親せきがほとんどというミサは葬儀ミサばかりだった。教会の結婚式などは「友人たち」も多いし、司式する司祭は教区司祭というのが普通だ。今回初めて、兄弟司祭が2人で司式して祖母の100歳を祝うというのを見たのだ。イマニュエル会系の保守カトリックが圧倒的に多い。
観察するのを楽しみにしていたのだけれど、葬儀でない100%家族ミサってこんなに安心できるものだというのがすべてだ。キリスト教はもともと子供たちは罪がないから天国に行けると言っていたので、教会のミサで子供が泣いたりしても誰も表立っては文句を言わない。でも、ここでは、子どもが泣いても動いても、司祭を含めてみんなオディールの血を引いているわけだから、完全に寛容で、リラックスしている。
しかも、ミサに通いなれている人たちだから、司式のプリントの歌詞を見なくてもみんなが問題なく唱和して、私の後ろにいた2mを超す男性(オディールの孫娘の夫)のバスの声が素晴らしく、立って歌うとそれが頭上から降ってくるので迫力があった。他にもバス、バリトンの男声が目立った。一般のミサでは歌の主導は女性信者が多いので新鮮だった。
ミサは午後三時からで、お昼には同じ場所のホールで、いとこ会(司祭二人を含むオディールの孫たちとその子供たち)がみんなで食事したそうだ。彼らだけで40名だったそうだ。
庭には卓球台もあってひ孫たちが自由に遊んでいた。

驚いたのは、オディールの幼友達に当たる老人が特別ゲストとして招かれていたことで、95年ぶりだという。その男性はちょうど4週間後に100歳になるのだそうだ。
彼は、オディールがニースに引っ越したので会えなくなった、と言い、オディールも彼のことをよく覚えていた。5歳なのによほど仲が良かったのだろう。はじめは敬称で話していたが、「昔は親称だったよね」と切り替えた。本当に95年会わなかったのか、どうやって見つけたのか、など分からないが、ブルターニュの有名貴族だし、相手も名家なのだろうから見つけることができたのかもしれない。二人とも頭は冴えていて、話がはずむ。ここでは、老いや認知についての不安を含む世間のさまざまな心配事がまったくない。抑圧されているとか見ないふりをしているというのではなく、丸ごと善意のユートピアの世界。ミサで世界情勢のこともちゃんと触れて、ブルノー君の話は印象的だった。(次の記事に書きます。)

オディールは、私に「ほんとはあなたと2人だけで話したい」と言った。
私は自由な精神を持ち続けるためのアドヴァイスを欲しいとリクエストした。
彼女は夫がフランス大使として赴任した多くの国の中で、エチオピアで出会った画家の話をしてくれた。多くの本を読むこと、多くの国、多くの人を知ること、が自由を支えてくれるけれど、本来、自由は無償で「与えられている」ものでそれを失ってはいけない、と。

91歳のオディールと知り合ってから、「魂の姉妹」とまで言ってもらえた不思議な関係を思うと、長生きするのが怖くなくなる。(ほおっておくと終活をしないとだめだとか、介護地獄だとか、施設費用やサービスがどうだとか、ネガティヴな情報ばかり入ってくる。オディールが特殊な恵まれた世界にいること自体は事実だけど、やはり彼女の精神の自由さから希望をもらえる)

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ミサの後のパーティの準備。
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by mariastella | 2023-11-07 00:05 | フランス
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竹下節子が考えてることの断片です。サイトはhttp://www.setukotakeshita.com/
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