ガブリエル・アタルが第二期マクロン政権の二人目の首相に任命されてから、フランスで最も若い首相として話題になっている。
マクロンも最初に大統領就任した時に39歳で最年少大統領だった。しかも選挙で選ばれた議員としての経験がなくマッキンゼーで働いていた新自由主義の申し子みたいに言われていた。でも、アタルのように童顔ではなかったし、24歳年上の妻を「従えている」ことでいろいろ「規格外」だった。(ゲイからはゲイ認定されている)
アタルは若くして政界歴が長い。今回彼が外務大臣に任命したステファヌ・セジュルネは38歳でやはり最年少外務大臣となったが、アタルとセジュルネは2017年に公的なゲイのカップルになっていた。2022年に別れたという。
マクロンといえばリセの時代の演劇のシーンが何度も放映されたが、アタルはもっとうわ手で、8歳半でモリエールを朗唱しているシーンが流される。父親(裕福なユダヤ人家系。母は白系ロシア人)が映画プロデューサーなので、自分も役者になることを目指していた。
政府のスポークスマンとして目立つ存在になり、昨年夏に教育相になってからは公立校でのイスラムスカーフ禁止など積極的な政策を打ち出していた。
それでも、シャルリー・エブドなどにすぐに赤ん坊の姿のカリカチュアが出たし、「あんなガキに上に立たれたくない、誰も耳を貸さない」と切って捨てる年配者もいる。
極右RFでマリーヌ・ル・ペンの姪と結婚している28歳のジョルダン・バルデラも、エネルギッシュで頭が切れて人気度が上がっているので、次代のホープとしての彼と対決するにはアタルが必要だともいわれている。バルデラの方がたたき上げ感があって、ポピュリズムには向いている。
バルデラは童顔ではなく見た目もいい。
アタルは、ただ若いだけでなく、子供の頃を彷彿とさせるような童顔で、天使のような感じだし、声も優しく、確かに揶揄されやすい。
でも、はたして年齢だけで成熟度を測れるかというともちろん否だ。
アメリカのように次期大統領選の最有力候補が80代前後という国の方がある意味で不健康な気がする。
ジャンヌ・ダルクについての研究書を読んでいたのだが、彼女がフランス軍の先頭に立ってオルレアンを解放したのは17歳の時だった。アタルはその倍の34歳だ。
シューベルトは31歳で、モーツアルトは35歳で死んだし、パスカルも39歳で死んでいる。
ナザレのイエスも、30代前半で磔刑死した。
一方で50代でも60代でも愚かな者はいくらでもいる。
知識量や体験が年とともに増えていくとしても、それを吟味したり消化したりする智慧のベースは14歳くらいで決まっていると思う。
ニュージーランドで最年少の21歳のマオリ族出身の国会議員が議会でハカを披露したインパクトのすごさを思い出す。
自分が歳を重ねると、逆に、年齢と能力は、比例も逆比例もしない、と分かってくる。
私は別にガブリエル・アタルのファンでもないし、マクロンにもうんざりしている。でも今回もサルコジ時代以来のラシダ・ダチが文化大臣に任命されたことなどを興味深く観察している。
今年はフランスにとって、100年ぶりのパリ・オリンピックという年だ。セキュリティも含めてこれを成功させることは政権の第一課題であることはいうまでもない。
少なくとも、バイデンやトランプの姿ばかり見せつけられるよりは、「保育園」と揶揄されるマクロンやアタルを観察する方がポジティヴな気分になる。また、日本のように、コミュニケーション能力のない政治家がひしめいているのを見るよりも、マクロンやアタルの威勢のいい言葉が「立て板に水」のごとく繰り出されるのを分析する方が興味深い。
混迷のヨーロッパを初志に戻って立て直してもらいたいものだ。