前作でモイジは、オクシデントは恐れとレジリエンス、アラブ・イスラムのオリエント世界は屈辱と怒り、インドやイランを含む中国や発展するアジアはルサンチマンと希望、と情動を色分けした。アジアの中で日本だけが「西洋」のように恐れを抱いているけれど、レジリエンスのやり方は「西洋」をうかがっているばかりだ。
新作の紹介文
「ウクライナ戦争とガザ戦争の間で我々は情動に支配される世界で生きている。ナショナリズムとポピュリズムが高まり、グローバリゼーションがそれを招いたと言われるようになり、気候変動の加速やAIの革命的発展を前にして、恐怖や怒りが 搔き立てられ、希望の居場所は少なくなるばかりだ。
米中の勢力争いというベースの上で、ルサンチマンと希望の混ざったグローバル・サウスと、屈辱と怒りの混ざった中東やアフリカと、恐怖とレジリエンスの間で揺れる西洋との間に、情動の新しい秩序が生まれようとしている。」
ドミニク・モイジは有名な地政学者で、多くのルーツを持っている。 父はアウシュビッツに収監されたし、母は1930年にユダヤ今日からカトリックに改宗している。妻はアメリカ人で、ルーツはイタリア系ユダヤ人だ。
英米でのポストも歴任し、複眼的視野を持っている。
彼の言っていることで、日本人として特に気に留めたいのは、同じ「西洋」に属するヨーロッパとアメリカの関係だ。
第二次世界大戦以降、そして冷戦以降のヨーロッパとアメリカの関係は日本とアメリカの関係に似ている。
つまり、ヨーロッパも日本も、アメリカとの関係を最高の「生命保険」とみなしてきた。
アメリカがもう20世紀のアメリカではないことを自覚しなくてはならない。幻想を捨て、以前とは全く違うアメリカと共にどう生きていくかを準備しなくてはならない。つまり、責任ある自立した国としてどうふるまうかを準備しなくてはならない。もう時間がない。2024年のトランプは、2016年のような現実主義、プラグマティックな男ではない。2020年の再選を奪った者たちに「報復」するという感情に先導されている。
たとえトランプが大統領にならなくても、バイデンが圧勝するということは考えられないアメリカの分断は進むばかりだ。
明治維新以降、実質的に「西洋」側に立ってきた日本も、ヨーロッパのように、「アメリカ抜きの西洋」を真剣に考えないと生き延びていけないということだ。 いろいろと身につまされる。