日常的につい口にしたり、頭の中に浮かんだりするひとりごとがある。
猫のトイレの掃除をしている時に気が付いたのだけれど「なんちゅうかさー」というフレーズが時々浮かぶ。いったいどこの方言だ?
こんな言葉、日本人と話すことが少ないから実際に耳にした記憶がないし、自分でも誰かに言うとは思えない。「なんといっていいかよく分からないけど…」という意味だろうが、脈絡のないところでふと浮かぶ。
フランス語でも時々、何かをする前や、終わった時などに出てくる言葉がある。
「Bon, ben」というやつで、これは、実際に誰かの前で口にすることもある。もちろん口語だ。何も考えていなかったが、検索すると英語なら「well, so,」「well,then,」と出てきた。その英語の日本語訳を調べると、「えーと、」「じゃあ、そろそろ」とある。
「なんちゅうかさー」と「Bon, ben」は私の中で等価らしい。頭の中では「思考停止」みたいなイメージだ。
もう一つ、うちの猫たちに「だけ」使う言葉がある。
私が書斎にある洗面台で手を洗ったり歯を磨いたりするたびに猫ズがやってきて、蛇口から水を飲もうとするのだ。ちょろちょろと出してやると、2匹が別の角度から同時に飲み始めたり、順番待ちをしたり、色々おもしろい。でも、もういい加減これでおしまい、という時に私はいつも「Finito!」という。
はい、これでおしまい、というスペイン語の過去動詞。
どうしてこの言葉が出てくるのかすごく不思議だ。
最初に耳にしたのはマドリード郊外の町からフランスに戻るバスの中だった。1990年代初めのこと、「姉妹都市」の交流として、ルイ・ロートレックとやっていたギター・アンサンブルの公演に向かった帰りだ。同じバスに、ジュニアの「体操チーム」がデモンストレーションをするために乗っていた。
で、スペインに滞在しての帰路、体操チームのコーチ(愉快な人だった)が、スペインで耳にしたからか、子供たちが騒いだりするたびにこの「finito!」を連発していたのだ。同じルーツだから意味は誰にでもわかる。でもフランス語は主語を立てるのが自然なので、この場合なら「C'est fini !」と出てくるところだ。
Finito! の方が簡単で、フランス語でないのでより効果的、「スペイン遠征仲間」の馴れ合い言葉、の雰囲気もあって、彼が「フィニィトー!」と叫ぶたびにみんなが笑った。
その言葉が、30年以上後に、猫への言葉として定着しているのはなぜかわからない。
でも、「フィニトー!!」と言って蛇口をしめると、猫ズはすぐにあきらめる。
彼らは日本語も理解できるから、オーで終わる言葉も違和感がないのかも。