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L'art de croire             竹下節子ブログ

政治家の「女性蔑視」発言について

先日、愛読している秋葉忠利さんのブログのこの記事を読んであらためて、ショックを受けた。



私はアングロサクソン初のフェミニズム(フランスではネオフェミニズムと呼ばれる「犠牲者である女性」が「加害者である男性」を弾劾する)やジェンダー平等やウォーキズム、キャンセルカルチャーに反対の立場だ。それを言うとLGBTの友人たちに誤解を受けることもあるのだけれど、ともかく「人格」の一部でしかない性別や性志向をアイデンティティに据える、という考え方そのものに反対しているのだ。「弱者」の形は千差万別だ。社会的強者が老いや病で弱者になることもあるし、互いを支えあう必要のある「二人の人間」も、親子、きょうだいや師弟や友人や先輩後輩などさまざまなものがある。ケースバイケースで、支えあい、助け合い、の関係が安定したものになるように社会の制度を変えていくべきだと思っている。

これについての記事。


このブログで一番最近のフェミニズム記事はこれ。


上川陽子さんという政治家が初の首相になるかどうかという話題もあるのに、自民党の男尊女卑のひどさは根強く延々と続いているようだ。

上川さんは学年が一つ下なので、同時期に3年くらい同じキャンパスにいたということで、すれ違ったことがあるかもしれない?という点では何となく親近感を覚えるけれど・・・アカハラ、セクハラ、色々大変なようだ。年の離れた二人の娘さんを育てるのも、実家の助けなどがあってのことのようだ。

私が育った時代はもっと旧弊だったのかもしれないが、母は花を活けたり人形作りや刺繍のお稽古に行ったり、どう見ても優雅そうだったし、日本の家庭には多かったと思うけれど、家計を全部握っていたのも母であり、子供の教育などの決定権もすべて母にあったので、(これは地中海沿岸の文化圏によくあるのだが)、対外的には父親が「権威」、家庭内では母親が「権力」みたいなイメージだった。

私は公立の共学校しか行っていない。高校はいわゆる旧制の男子校だったせいか男子の数が女子の2倍くらいだった。少なからぬ女子が、女子「だけど」親の期待を受けてがんばる、とか、女子「だから」やっぱり男子がやる気を出す年になれば追い抜かれる、とかいうプレッシャーを感じていることは感じていたから、私には特に「がんばる」モティベーションはなかったのだけれど、彼女らのために、性別は関係ないよ、と示すことを多少は意識していた。(成績と進学先のランクから言えば勉強する必要はなかったし、小学生時代からずっと「兄の授業」を受けていた。大学紛争で授業がストップしたころは兄が大学での講座の内容を教えてくれていた。)

「妹」というポジションもあって、「男女差別」は、いつも「有利」に働いていた。私が憧れていたのはバレエ教室でのプリマなどで、「男勝り」とか「男と互角」にという姿勢とは無縁だった。

でも、さすがに、私の受けている「特権」が「女性性」と結びついているのは自覚していたし、「若い女性」であることがプラスにもマイナスにも働くことは分かっていた。

「女性」であることについての「特権」的な部分を享受していたものの、それが「若い女性」であることと結びついているのは明らかで、「この国で30歳を越えたくない」という意識がいつのまにか芽生えていた。

フランスは少なくとも、そういう意識とは無縁の国だったし、日本とも物理的な距離を置いたことで、「特別枠」で齢を重ねてこられたのは僥倖だった。

でも、日本の「男尊女卑」をネオリベラリズムで克服するのは本当の解決にならないと思う。外から見える形で数を合わせたり、女性に有利な条件にしたり、「対等」に戦えることを誇示したり、差別された状況からいかに努力して能力を認められたかを強調したり、というのはどれも、「男性と女性」を分けて比べたり戦わせたり不平等を正したりというやり方になってしまう。

人を「男女」というカテゴリーに閉じ込めてしまう。それがLGBTであろうと、「レッテル」をはることには変わらない。

大切なのはやはり、性別や性的志向などで限定せずに、一人一人の欠けた部分、足りない部分、分け与えることのできる部分、他者の助けを必要とする部分などを見て、何ができるのかを共に考えることだろう。


うーん、女性差別だけではなく、日本でコロナ禍の折に顕著になった「世間の目」や「同調圧力」のことなども思い出して総括しなければ、新しい道は開けないかも・・・。


by mariastella | 2024-06-02 00:05 | フェミニズム
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竹下節子が考えてることの断片です。サイトはhttp://www.setukotakeshita.com/

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