Jacques ARNOULD(フランス国立宇宙研究センタ— 倫理担当)は日本でも京大や日仏学院などで講演したことがあるらしい。でも本は訳されていないようだ。
こんな「宇宙研究センター」に倫理部門があるのはフランスくらいのものだろう。彼の、ドミニコ会の修道士で神父だった経歴(結婚するために還俗した)についてその意味を考える日本人はいたのだろうか?
彼は神学者であり科学者でもある。
『宇宙の激動: 神、地球外生命体、私たち』という本もある。「宇宙人」がいるとしたら、私たちとは別の場所で生まれ、生きている本当の意味での「他者」ということで、その可能性を否定するどころかわくわくしている感じだ。
彼は近頃フランスで人気の「最新科学による神の存在証明」に否定的だ。
神は存在証明を必要としていない、と言い切る。
アルヌーは、「奇跡」は必要だという。誰かが巡礼地に行って祈ったら奇跡的に難病が回復した、それによって「回心」して「神」と出会うのは素晴らしいことだ。その「奇跡」のメカニズムの解明とは関係なく、ある人が「神と出会う」ことこそが奇跡なのだ。
何でも「説明できる」とか「証明できる」というのは科学的ではない。思考停止しない限り、常に「疑い続ける」こと、「すべては分からないと認めること」が科学であるという。
で、宇宙人のことで、昔は天動説から地動説に、そして今は他の惑星の存在や動きも解明され、太陽系のようなものは銀河系にそれこそ星の数ほどあり、銀河系のようなものもまた無数にあると判明している。だから、「太陽系の惑星の中では地球にしか生命体が住んでいない」というのが確かだとしても、全宇宙規模ではもちろん確率はゼロではない。でもアルヌーはおもしろい例えをする。
「私がもし、高額の宝くじを毎月一度買うとします。それを毎週買うことに変えたら、当たる確率は4倍に増えます。それは数学的に計算できて異論がない。でも、いつか私がくじに当たるかというのはまったく別の次元のことです。」って。なるほど。
彼の本、最近出た対談集も含めてぜひ読んでみたい。