2024年フランスの革命記念日 (付記あり)
7/14は革命記念日で、例年通り軍隊の行進(今は軍隊だけでなく消防隊員をはじめとする制服組が加わっている)が中継された。
突然の解散と総選挙でマクロン派が相対多数も失ったカオスの中、いったいどういう雰囲気で行われるのだろうかと興味津々でテレビを視聴した。 辞任するのではないかとすら言われたマクロンは、相変わらずガブリエル・アタルとジェラルド・ダルマナンという重鎮を脇に従えて、何ごともなかったかのように構えている。実際、一見、何ごともなかったかのようなある意味で安心感を与えることに成功した。(新政府は7/18以降に構成される予定) ノルマンディ上陸作戦80周年セレモニーの再現からはじまったので、これも、6月からの延長のような雰囲気。 オリンピックの関係で、行進はシャンゼリゼ大通りより少し短く幅が狭いフォッシュ大通りなので、凱旋門は少し斜めに見える。(第一次世界大戦中の1918には年には被害を受けたシャンゼリゼを避けてフォッシュが使われたと解説されていた。) フランスの士官学校はいろいろあるけれど、ナポレオンが国民皆兵に伴ってエリートを養成しようとしたことで、今も、士官学校はエリートを輩出している。給料をもらいながら士官学校を卒業しても別のグランゼコールをその後に経由したり、就職する企業が負債を返済してくれたりするなどの制度があるので、軍人になる義務はない。 それでも、ポリテクニックをはじめとする士官学校生が7/14の行進に参加するのは変わらないし、今は女性が増えているので、全体としても女性の姿が多くなったのがはっきりと分かる。 ナポレオンは、パリの通りにボナパルト通りくらいしかないように、その後のフランス政治の中で結構微妙で複雑なポジションなのだが、やはり士官学校を出自を問わないエリート養成校とした功績は大きい。 でも、こうやって一秒に二歩のリズムで整然と行進する制服士官や士官候補生などを見てみると、やはりいわゆる「白人」が圧倒的に多い。ムスリム移民が増えるとフランスはイスラム化するなどと極右は警鐘を鳴らすが、実際にイスラム原理主義者や敬虔なムスリムなどは、軍隊の規律や集団生活に入れないだろうから、この構図は変わらないだろう。すると、ムスリム過激派や貧困層の移民の子弟が反社会的行動をとると、それに対抗するのは「非ムスリム」層が多くなるわけで、警察をレイシストだと非難する事件も増えてくる。悪循環だ。 ともあれ、選挙戦と違って、制服組が整然と行進する様子は、「規律」「連帯」を可視化する。 天気も快晴で暑くもなく湿気もなく、理想的で、久しぶりに楽天的な高揚感が漂っていた。 警察や憲兵が操作や救助に使う犬たちも行進していて、その中には首に勲章をつけている犬もいたのがほほえましかった。軍隊の最後はいつも通りの外人部隊で、ひげを伸ばしたままでいることを許可されている唯一の舞台なのでみなが口ひげあごひげを伸ばしている。140ヶ国以上の出身者からなっているけれど、共通語はもちろんフランス語で英語は「禁止」だというのがおもしろい。 次に「戦闘機の行進」というのがあり、40機近くが次々と飛んでくる。私には名前がよく分からないけれど、大型の戦闘機を先頭に小型のミラージュ機が4 機並んで飛行してくるのがあって、私は自宅の三階でテレビを視ていたのだが、轟音がしたので天窓を見上げると、まさにその5機が通過していった。二度通過したのを見て、別の二度は音だけで機体は見えなかった。 天窓越しとはいえ、頭上を戦闘機が通過するのを見るなんてはじめての経験だ。 テレビの光景とほとんど重なるタイミングだったので不思議だったが、テレビの中継はチャンネルによって1分ほどずれているものもあったのでそのせいかもしれない。(私は解説によってザッピングしていたので) 最後が騎馬隊の行進で、右手に旗を持っていたり剣を掲げているのは分かるとしても、先頭のグループは、騎手が両手を使って太鼓や管楽器を演奏しているのに馬がまっすぐに進んでいるのは印象的だった。でも馬だから、歩幅は合っていても、上下動がずれているし、糞も落ちるので、行進の最後というのは納得。 で、クライマックスが、最後の馬に乗った大佐(リオ五輪の金メダリスト)が、オリンピックの成果を掲げて登場。 なるほどなあ。革命記念日とオリンピック、絶妙のタイミングだ。 大佐は、聖火をスポーツ選手に手渡す。 オリンピックの五色の上着を着た若者たちが行進して五輪を描く。 その向こうにはフランス国旗の三色の布が広げられる。 そういえば五輪には白はないんだなあ、白があると地の色との区別がつかないからなあ、などとあらためて気づく。 で、五輪の五色とフランスの三色が並び、軍人からスポーツ選手へ(もっともオリンピック選手で軍に席を置くものは少なくない)、若者たちへ、とよくできている。 すべてが平和裏に行われた。 この日の朝、フランス時間の深夜に起こったアメリカでのトランプ前大統領狙撃事件のニュースが衝撃を与えていた。 銃社会のアメリカ、合衆国のアメリカに比べて、革命を経ても相変わらずの中央集権国家のフランス、選挙戦で険悪になっても、人々はバカンスに出かけ、お祭りが好きなフランス。 81歳と78歳の大統領候補が戦うアメリカ。 46歳の大統領の横に、左派出身の36歳の首相、右派出身41歳の内務大臣が控えるフランス。 オリンピックはどうなるか知らないが、革命記念日の行進はともかくアクシデントがなく過ぎ、マクロンの晴れやかな顔も、この時ばかりは憎悪をそそらないように見えた。 「パンとサーカス」という懐柔策が成功したというより、このひと月のテンションが下がったというところだ。 五輪憲章は、ユニヴァーサリズムに基づいて国家間のメダルの競い合いという形を禁じている。 実際は、政治利用されたり、汚職にまみれたりする五輪だろうけれど、つかの間の夢でも、このままアクシデントがない「平和」な夏が過ごせるように祈るばかりだ。 (この日の夜、聖火ランナーがルーブル美術館のギャラリーを走るシーンが中継された。ルーブル内だけで何人ものランナーが受け継ぐ距離がある。この後も、開会式までの10日間、聖火はパリの観光名所をめぐる予定で、やはりパリって「絵になる」街で、こういう演出が最大効果をもたらす。 でも、15日の新聞を見たら、本来なら第一面にこの聖火登場や革命記念日の行進のあれこれが掲載されてマクロンのジュピターぶりも載るところが、もちろんすべての新聞の第一面はトランプ前大統領の狙撃事件直後の写真だし、全体の四分の一がその関連記事だった。マクロンとしては計算外だったろうが、まあ、猟銃を別にしてアメリカに比べるといわゆる「銃撃事件」は圧倒的に少ない国だから、「平和」のコントラストは印象づけたかもしれない)
by mariastella
| 2024-07-15 00:05
| フランス
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