7/19、開会式の一週間前、セーヌ河水上行進部分の河畔が一般人に閉鎖された。
通行証がないと入れないし出ることもできない。
7/20はリハーサルだった。100隻近い船が、100メートルの距離を置いて、オーステルリッツからトロカデロまでの6 kmを進む入場行進が3h45も続く。
しかも、その川沿いの「閉鎖」って、向こうの景色はまあまあ見えるにしても、要するに柵を張りめぐらしているわけで、なんだか難民流入禁止の国教の壁みたいだ。
ちなみにこの柵は、今回のオリンピックグッズの多くと同じように中国製だ。
中国からフランスへの輸出は三割増えたなどとも耳にする。
で、北京オリンピックの時と同じように、セーヌ河畔や会場の周りからはホームレスなど徹底的に移動させられた。投入される警備は4万5千人。許可証を持って開会式に出席したり出場したりする人や関係者が何万人いるか知らないけれど、数字だけ見るとほぼ過剰防衛といっていい。北京もこんな感じだったんだろうなと想像してしまう。
おかげで、セーヌに面しているけれど柵の外にあるカフェやレストランは、普段ならかき入れ時なのにガラガラで閉店も相次ぐという。
オリンピックのインバウンド効果を狙って価格が異常に上昇したパリ市内のホテルも、なかなか埋まらなかった上にキャンセルが相次いで、今は直前予約で格安になっているところも多いとか。
「オリンピック難民」と形容されてパリを離れる市民もたくさんいる。
そればかりではない。
セーヌ川というとバトームーシュのような観光船を思い浮かべる人が多いだろうけれど、実は、北東部の穀倉地帯から年間300万トンの穀物を輸送する交通の要所である。その三分の一は夏季に輸送される。経済的にも環境的にも欠かせない輸送手段で、パリを経由してノルマンディへ、ルーアンの入り江(オンフルール)に運ばれる。フランスは生産する穀物の二分の一を輸出する農業国なのだ。一週間にわたってセーヌを交通止めにすることの痛手は少なくない。
また、セーヌ川をトライアスロンなどで使うということで、水質検査、水質改善のために莫大な費用がすでに投じられてきた。
河畔にはいろいろな趣向が凝らされて演出されているようだが、当日までカバーがかかっているなどしてかえって景観をそこねている。閉鎖の翌日の「予行演習」でも、周りの演出は当日まで極秘なので、運転士はヴァーチャルな画面でシミュレーションしながら舵を取る。見えているのは人口の「フランス式庭園」島だけだ。
それにしても、この、たった一夜のためのこれほどまでの肝入れって、いったい何だろう。
近代オリンピックのクーベルタンの国、アテネの次の1900年の開催国だが、今回は3度目でなんと100年ぶりの開催だ。いろんな「メンツ」とか、EU内でも国力と共に弱くなっている威信の回復とか、国の体質として残る「中央集権」王様国家の矜持なのか…。
あたかも政治的には、極右や極左が台頭してマクロン派が劣勢になっている危機の中で、パリだけは、2001年のドラノエから現在のイダルゴに至るまで安定の社会党市長が君臨している。(イダルゴは2022年の大統領選にも出馬したが1.74%の得票しかなかった。)
パリ大会のオープニングセレモニーは、果たして成功するのだろうか。
2020年に中止、2021年に無観客開催で実施された東京オリンピックのセレモニーにまつわるいろいろなスキャンダルなども記憶に残っている身としては、複雑だ。
事故やテロが起こりませんように。