ひと月ほど前に行った巡礼記の覚書を始めます。
この二つと、ここ数年に訪れたサレット、ポンマンの資料をじっくり比べて、「御出現」やら「奇跡」を求める人々の心とその「管理」の仕方についてまとめるつもりです。
五世紀に、カトリック界ではじめての聖母のチャペルが建てられたところ、そして、カトリック界で一番最近2001年、聖母御出現が認められたところのふたつを梯子しました。
まず、モンパルナスからTGVでアンジェへ。オリンピックが始まったところで警戒がすごいかと思っていたら、拍子抜けで、ほぼ何のチェックもなしにホームにたどりつき、予約のQRコードを見せるだけでOK。(数日前にはTGVの配線が超極左グループに破壊されてダイヤは大混乱だったが何とか修復されていた。)
アンジェの駅。ずっと好天に恵まれた。
駅前広場に面するホテル・ド・フランスに宿泊。 タクシーを呼んでもらって、すぐにîle de Béhuard(ベユアール島)に直行。
この島は、ロワール河の島の中で唯一、120人の島民がいる独立した自治体を形成している文化遺産。
巡礼がどうとかいうより、何よりも美しい。花が咲き誇り、15世紀から17世紀の 街並みも風情があって、歴史も刻まれている。間違いなくフランスで最も美しい村のひとつだろう。
革命にも宗教戦争も逃れ、ドイツ軍とフランス軍が河を隔ててにらみ合った時も、島は無傷だった。
昔はマリア島と呼ばれていた。五世紀のアンジェ司教聖モリーュが岩場にマリアの像を建立したからだ。モリーユは、異教の女神の像があった少し下流の島で聖母マリアのビジョンを見て、この島に聖母図像を祀った。キリスト教文化圏で最初の聖母マリア崇敬所となった。431年のことだ。431年とは公会議ではじめてマリアが「テオトコス」神の母として認められた年で、翌432年にローマでバジリカ教会サンタ・マリア・マジョーレが捧げられたよりも先になる。
(今でもフランスでは34のカテドラルがノートルダムに捧げられていて、この僅か3kmの長さしかない島にフランス国王が21回も訪れ、ドン・ボスコなども参詣している。)
11世紀にこの島にビュアールという騎士がアンジェのサン・ニコラ修道院を建てた。ロワールを渡る船の守護として有名になった。
今あるノートルダム教会は15世紀にルイ11世が遭難を遁れた後で建造したものだ。
16世紀の奇跡の聖母子像が有名で1923年にピウス11世によって戴冠した。
ロワール河の真ん中に、4億年くらい前に溶岩が隆起して生まれた島で、ロワールの水位が上がると洪水となり、ベネティアのように船で行き来することになるので住宅は高床となっている。。
1910年には7m、2000年には5.6m、2006年も浸水した。