(前の記事の続きです)
8/12、パリオリンピックの閉会式の翌日にはじめてパリの町を歩いたら、メトロの駅においてある地図がオリンピック仕様になっているのを見つけた。
オリパラの期間に閉鎖された駅もあるし、交通制限もいろいろあるから不便になっているのに、競技会場がパリの観光スポットをそのまま使っているので、海外や地方からの観光客やサポーターに便利なように、会場のことなど詳しく載っている。
いつもメトロに無料で置いてある20minutesという新聞は、週末やパリの学校休みの間は発行されないのだけれど、オリンピックの特別ヴァージョンがあったのをはじめて知った。
レストランにおいてあった地元日刊紙のパリジャンを手に取ると、一面がこういうのだった。大きな「メルシー」。サッカーのワールドカップなどの決勝の翌日の誌面などとは違う。すべての関係者に感謝している。こういう言葉を真っ先に出してくるのは好感度大だ。
そして最終面がこれ。「ブラボーそしてメルシー」とある。政府からのメッセージだ。
選手だけでなく大会の関係者、コーチ、ボランティア、すべてのチームや、チームを支えたベースになるチームなどを称え、感謝している。
突然の議会解散とその後の分裂、内閣不在という政治危機を一瞬忘れさせたという点で政府には最高のタイミングだったからメルシーというのも分かる。折から、英仏海峡の向こうではロンドンが移民問題で激しい暴動が続いているので、パリの祝祭のありがたさを身にしみているのだろう。金メダルの数も「ヨーロッパでは一位」というので、EUやNATOでの存在感が薄れているフランスにとっては、僥倖だった。警備も各国のポリスも招待して加わったことが好評だったし、テロもなく犯罪も激減ということで「やればできる」のか、「この後が怖い」のか、よく分からない。
他の新聞の社説も目を通すことにした。カトリック系日刊紙「ラ・クロワ」と昔は共産党系で今はアンチリベラル左派の日刊紙「ユマニテ」。
政治や経済の思惑や一部の富裕層の利益と結びついているオリンピックとはいえ、多くの人が「自国」や「地元」の選手、チームを応援してしまうこと自体はポピュリズムの心理操作とはいえないだろう。
「愛国心(パトリオティズム)は同胞への愛で、ナショナリズムは他者への憎悪である( Le patriotisme c'est l'amour des siens. Le nationalisme c'est la haine des autres)」 と言ったのはリチュアニア移民でフランスに帰化した作家ロマン・ガリー(Romain Gary)だった。