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L'art de croire             竹下節子ブログ

「聖痕」についての覚書  その6

(前の記事の続きです)

十字架上のイエスの苦しみと受難は、神の愛の最高の表現だと考えられている。子であるイエスを犠牲にすることですべての人を罪と死から解放するというわけだ。
だから、受難のイエスと神秘的に一致するという聖痕は、この神からの無限の愛に応える愛の具現だということになる。

教皇は、2024/4/5に、アッシジのフランチェスコが聖痕を受けたトスカーナのアルヴェルナ山でフランシスコ会士たちを前に、

聖痕は、私たちへの愛と私たちの救済のためにイエスが自分の体に刻んだ苦痛を思い出させてくれるものだが、同時に復活の勝利の徴しでもある。復活のキリストの慈愛は、キリストの傷という溝を通して、私たちに向かって流れてくる。

という趣旨の話をした。

同様に、「聖痕者」を前にすることは、さまざまな過ちや不正や苦難による傷跡を抱えた人々と向かい合ってつながるようにキリスト者を招いている。

という。

確かに、復活したイエスの栄光の肉体が完璧に輝くものであるより、残った傷が畝や溝のように愛を注ぐ道になっている、という比喩には含蓄がある。

イエスの後で残酷な殺され方をしたさまざまな殉教聖人の場合は、死後に輝き方向を放つような美しい姿に戻っていた、という伝説がいろいろある。

イエスが生身の「人間」としてきっちりと傷つき、そのままきっちりと復活したというストーリーは、永遠のミステリーであり、十字架像だけではなく多くの聖痕者たちを通してキリスト者はそのミステリーの中で信仰と愛を養うということだろうか。

(終わり)

私に「聖痕」が現れる可能性はゼロだけれど、もしそんなことが起きたら、徹底してその謎に迫りたくなるだろう。公表したらどんな人が接触してくるのかにも興味がある。
でも、ある意味では、他の「奇跡の治癒」とか「予知」とかさまざまな「超常現象」の方が、「聖痕」よりもハードルが低いような気もする。他の「奇跡」は別の宗教の文脈でも、非宗教的文脈でも起こり得るし、何らかの「役に立つ」ことも考えられるけれど、「聖痕」は、十字架のイエスへの思い入れと切っても切れないし、それ自体は何の役にも立たない「謎」でしかないからだ。
超常現象については、科学が発展するにつれてますます謎が深まるので、そのうち、じっくりとまとめてみたい。


by mariastella | 2024-09-19 00:05 | 宗教
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竹下節子が考えてることの断片です。サイトはhttp://www.setukotakeshita.com/

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