最近知ってなるほどと思ったことがある。
刑に服している犯罪者が釈放された後で「再犯」するのを防ぎ、社会復帰できるようにブラジルのリオの刑務所が採用した方針だ。
(テロリストやペドフィリアや麻薬密売などはまた別で、空き巣狙いや万引きや喧嘩沙汰などが対象)
ブラジルでは、多くの犯罪者の教育程度の低さが社会復帰を困難にしていると考え、(多分、厳選された)本を1冊読めば刑期が4日間縮められるというシステムを採用しているそうだ。それで、年間最高48日間の刑期短縮、つまり最高12冊が対象になる。1ヶ月半以上だから馬鹿にならない。その「課題図書」がどのように決っているのか、読んだ証拠に「感想文」など書かせられたり質疑応答があったりするのかは知らない。
でもいわゆる思想犯の再教育とか洗脳とかで特定のイデオロギーの「正典」のようなものを無理やり読ませるというのではなく、本を読めば世界が広がる、視野も広がる、「文化度」も上がり、洗練される、というのを狙っているという。
犯罪者の多くは高等教育を受けていず、ドロップアウトした人で、生き方の選択肢が限られている。倫理的判断力も劣っている。それらはすべて、「読書」によって改善され、別の世界の扉を開いてくれる、で、再犯率がぐっと下がるということらしい。
読解力に問題があったり、そもそも文章をまともに読めない人もいるだろう。
そういう人たちにも「本を読むことができる」サポートをするのだろうか。
そして、実際に、有益な本や文学などを12冊も読めば、刑期短縮の対象にならなくても、読書の習慣がついてもっと本を読みたいと思う受刑者が出てくるかもしれない。
「読書」が開いてくれる「大海」がなければ、この世の文化度はまったく違っていただろう。
それを思うと、今のことは知らないけれど、義務教育において課題図書や読書感想文が義務になっているのは重要だ。フランスでも、一年に何冊も古典を中心とする課題図書があって、その度に「要約」や「分析」や「感想」をまとめなければならない。
だから、さぞや教養がつくかと思いきや、今のフランスの中学生の読解力どころか読書力は恐ろしく低下しているという。
思えば、今の世界、課題図書の要約やら分析など、コンピューターで検索すればいくらでも見つけることができるだろうし、「感想」だってAIに書いてもらえるだろう。
ひょっとして、今の若者は、古典や文明論や哲学書、思想書など、読まないできているのかもしれない。
情報量は膨大に増えているので、私自身も、読みたい全ての本を読めるわけではなく、ネット情報で必要な部分を把握するということが多い。もちろんそれを有効に使えるリテラシーがあるからいいのだけれど、自分で本を読み考えるという習慣がなくなった子供たちや若い世代が、さまざまなSNSでインフルエンサーの話をきいて納得、追随するような時代になっているとしたら、問題だ。
編集者たちは口をそろえて「深刻な出版不況」を憂える。深刻なのは子供たちや若者たちの未来なのかもしれない。