カニバリズム(人肉嗜食)の犯罪者と10年間向き合ってきた精神科医が、ベルナール(仮名)という患者と共に歩んできた道とカニバリズムの心理の考察を彼の合意と共に書いた本が出た。
著者(女性)によると、1984年から今までフランスで約20件の「人肉食」事件があった。その前の1981年に起こった「パリ人肉事件」は最もスキャンダラスに報じられた上、当事者がその後もそれをネタに「活動」していたことで、今も語り継がれるし著者も言及している。
著者によると、人肉嗜食殺人者のほとんどは「精神異常」で「責任能力がない」と見なされて受刑の対象にならない。でもこのベルナール(殺した相手の心臓を取り出して料理して野菜や調味料を加えて食べた)は、医療刑務所に服役していて、著者は10 年に渡って彼と面談し、モンスター性や悪が、そもそも人間性のどこにに潜んでいてどのように外面化するかの問題について、徹底的に話し合ってきたという。
彼女は仕事で他のカニバリストと面談することももちろんあるが、必ず握手して始めるという。カニバリズムというとホラー映画の映像が浮かんで恐怖にとらわれるがそれを押さえて握手という接触をすることで関係性をつくるのだ。
今の世界の戦争地域で、戦っている同士が、互いの市街地を爆撃して子供を含めた多くの命を「殺す」映像が、毎日のように報道されている。
「イスラム国」が中東の一部を占領していた頃にも残酷で恐ろしい映像が流されていた。
(フランスでは)戦争と被害の様子があまりにも毎日報道されるので、いわゆる「悪の陳腐さ」と、私の場合、無意識の自己防衛のために麻痺してくる。
でも、「殺して食べる」「殺されて食べられる」というインパクトは別で、そのタブーの深みに切り込んで「悪」を考えようという著者と患者との連携は、多くのことを示唆してくれる。
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