日本で移動の時に、スマホやタブレットを見たくないので薄くて読みやすいマンガを借りて読んだ。ゴミ清掃員が幼稚園児の憧れに映るなんて、フランスでは想像できない。このマンガは珍しいエピソードがたくさんあって「教育的」でもあるけれど、いつも不思議に思っていることがさらに印象づけられた。日本ではゴミを袋で出すというのは知っていたけれど、今さらながら不思議だ。町内会でゴミ出しの当番が決っていて、カラス除けのカバーをかけたり、後で掃除したりするという話や、悪天候の日でも通りの向こうの集積所まで運ばなくてはならない、などということも読んだことがある。
フランスでは、燃えるごみと紙、プラスティックなどのリサイクルゴミ用に2種類の蓋つきゴミ箱が市から各戸に提供されていて、それを家の前に出しておくだけでいい。(ビンの回収箱は通りにある。)ゴミ回収車が来てそれを機械で持ち上げて空にしてくれる。それをまた家の前に戻してくれるから回収すればいい。 どういう理屈でこの違いがあるのか分からないけれど、週に数回何十年もこれを続ける時間と鵜力の差は膨大だろう。日本ではその他に「ご近所の眼」というのもありそうだし‥。フランスではゴミ収集の税金は固定資産税についてくる。家の所有者はそれを借家人に請求することができる。
だから、このマンガは、その差にあらためて愕然とさせられるものだった。フランスのゴミ収集作業の人はほとんど移民労働者が多い。そして、年末には郵便配達人もそうだけれどカレンダーを各戸に持って来るので、日ごろの感謝のために、絵柄を選んで買う。値段はないので心づけを渡す仕組みになっている。各戸のゴミ箱が分かっているのだから、いつも大目に渡しておく。
もう一つ、日仏の差があまりにも大きいと思うのは、政治で話題になる「夫婦別姓」の問題だ。夫婦で姓が別だと家族の一体感が失われるとかいう。子供の頃、親が離婚した子供の姓が突然変わるので驚いた記憶がある。
フランスでは基本的に学校でも先生からでもファーストネームの方で呼ばれるので気にならない。第一、いわゆる婚外子が半数以上とか言われているし、親が結婚していようがパクスと言われる事実婚状態であろうが、夫婦別姓でもいいし、子供の姓も自由で、たとえば鈴木さんと佐藤さんの子供の出生届を鈴木姓にしても佐藤姓にしても、鈴木-佐藤や佐藤-鈴木という合成名にしてもいいし、後に子供が変更することだって可能になっているはずだ。そのことで家族の一体感がどうのこうのというのは聞いたことがない。ゴミの収集と夫婦別姓。
関係ないようでいて、日常の生活に関わる問題だ。
他の国と比べたことがないので分からないけれど、フランスの方がいろいろな意味でプレッシャーが少ないのは確実だ。
このような「文化」の一側面にスポットを当てたという点で、このマンガは興味深かった。(その他に、このゴミ清掃人がお笑い芸人であり、妻子のために努力している様子、このマンガを妻が描くことになった経緯なども印象的だった。)