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L'art de croire             竹下節子ブログ

トランプ再選について思ったこと (追記あり)

予定稿と予定稿の間に、アメリカの大統領選でトランプがほぼ勝利というニュースを聴いた時点での感想を書き留めておく。

まず、私の予測通り。

バイデンがウォーキズム的に「正しい」副大統領として、コミュニタリアニズムのシンボルのようなハリスを選んだことはすでにカリカチュラルだったと思う。
そのハリスが正式候補になったけれど、今のアメリカで、建前はともかく、「インドやジャマイカにルーツを持つ女性」に最終的に投票する人が過半数とは思えなかった。
フェミニズムや妊娠中絶についても私はもともと犠牲者主義のアメリカのフェミニズムでなくフレンチ・フェミニズムの擁護者だし、中絶にしてもそれを「権利」とか「自由」として票集めにするのに違和感がある。

では私がトランプを支持していたかと言えばもちろんそうではないけれど、アメリカが「世界の警察」みたいなものから手を引くこと、今この瞬間に殺し合いをしている戦争をやめさせることは願ってもない。

少なくとも、2021年初めのトランプ派による議会占拠という暴挙の可能性はなくなった。

トランプが高邁な精神を持っているかは別として、少なくとも「偽善」のない(あるいは偽善を装う能力も習慣もない)人なので、目立ちたいためにだけでも北朝鮮と話し合い朝鮮戦争を終わらそうとしていた光景は「やればできるかもしれない」という希望を抱かせた。
ずっと民主党支持だった知識人でトランプ支持に転向した人を何人か知っていて、不思議だったけれど、彼らの期待も分からないではない。

アメリカのイスラエル支援は、アメリカとイランとの戦いの代理戦争の面が大きい。
今や、ユダヤ系アメリカ人や支持基盤の福音派も、ネタニヤフの暴挙には抗議しているし、戦争を減らすことで軍事産業のうまみが減っても、壊滅状態のガザやベイルートやウクライナの戦闘地区に向けた「復興」産業は、マーシャルプランのようにうまみが出てくるだろう。
とりあえずは、少しでも戦場で殺される兵士や爆撃で殺される非戦闘員の犠牲を減らしてほしい。
(追記 : トランプがプーチンと「友達」だからウクライナ戦争を直ちに終わらせるといってもロシアの暴挙が続くだけではないかと思われそうだが、プーチンは、ウィルソン以前の停戦タイプの人なのだそうだ。ウィルソン大統領以降のアメリカの「終戦」は「無条件降伏」がデフォルトになっていたけれど、それ以前は互いの譲歩を視野に入れる「妥協タイプ」が主流で、トランプはそちらに属するそうだ。プーチンもトランプもそうなのだとしたら侵略のエスカレートは避けられるかもしれない。)

20世紀の戦争の頃と違って、いくら主要メディアが操作されているからと言って、今は情報の多さとファクトチェックの可能性の広がりは比べものにならない。
それでなくてもエコロジー、地球の環境保全を考えざるを得ない時代に、莫大な浪費と汚染である戦闘をエスカレートさせるのは避けるべきだ。
アメリカが手を引いたらBRICSなどが帝国主義に走るかと言えば、単純には言えない。新興富裕国では貧富の格差が大きい。
ほとんどの「普通の人」は、「身の安全」と衣食住がひとまず足りることを望んでいる。
自分は戦場で死ぬことのない少数の権力者が暴力で世界を支配するという歴史は転換点に来ているかもしれない。

10月下旬の日本は、戦争のニュースも少なく、観光客がいっぱいで、いくら日本が「凋落」しているなどと言われても、消費の殿堂みたいに見えた。
(総選挙もあったけれど、アメリカのように市井の人が自分のうちの庭や窓に支持する政治家の名を掲げるなんてことは想像さえできない。それはフランスも同じだ。)

それでも、天災による犠牲者は日本も含めて世界中で絶えることがない。、
私自身は20世紀の戦争を免れ、あらゆる点で安全で豊かな場所で70年以上生きてきた。この幸運は、この後22世紀まで生き続けるだろう世代に対して何ができるかと考え続けるためにあると思っている。考え続けるだけでなく、この幸運があったからこそささやかなが音楽を通した美の継承や分かち合いも実現可能だった。

アメリカの政治や社会事情にはあきれることが多いけれど、どんな状況であれ、一人でも多くの命が助かる世界につながっていくことを願うばかりだ。



by mariastella | 2024-11-07 00:05 | 時事
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竹下節子が考えてることの断片です。サイトはhttp://www.setukotakeshita.com/
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