ルイ14世とダンス、フランス・バロック音楽、音楽アカデミー、ダンスアカデミー、王立オペラ座など、彼の即位から約100年続いたフランス・バロックとの関係は、なんといっても、フィリップ・ボーサンの『ルイ14世--アーティスト』(1999)が有名で、何度読んだことだろう。
それに刺激を受けてローラン・ダンドリューはルイ14世と建築についての本を出したが、今年、ルイ14世とモリエールの関係についての本が上梓された。
ルイ14世が7歳の時からバレエを始めて日に7時間も練習するなど、プロのダンサーと言っていいくらいの域にあったことや、リュリーとの関係は知られているけれど、モリエールのコメディ・バレエに出演してモリエールと舞台を通した強い絆で結ばれていたことは意識していなかった。
カトリック教会的には、職業としても「非人」扱い、芝居のテーマそのものも冒瀆だと見なされたのに、国王が嬉々として共演し、モリエールを原作者、監督として親密な時間を過ごしていたのだからおもしろい。
ルイ14世と国教会権力とアートと神の関係についていつか徹底的に書いてみたいと思っていたのだけれど、ダンドリューの本に先を越されたかもしれない。
ダンドリューは右派、保守の論客だとカテゴライズされがちだが、彼のカトリック普遍主義論は私の考えと一致している。グローバリゼーションという経済現象を推進するイデオロギーに対して、それぞれの文化をリスペクトしたままで霊的一致を視野に入れるカトリック普遍主義について下記の著作がある。論点が整理されていて分かりやすい。でも、今のフランスで、クラシックなフランス人がこういう正論を語ると右傾イデオロギーだと見なされるのが残念だ。
すごい表現だなあと思うのは、啓蒙の世紀以来フランス人、フランス文化の中にある
シニズム、冷笑主義のことを「fanatisme du néant 」と形容していることだ。
(これについては別の機会に解説するかもしれない。)
(ルイ14世と建築について)