Q : ドイツ語ではノスタルジーは「Heimweh」と言います。それは故郷を懐かしむ心という意味です。ノスタルジーは時間だけではなく空間にもあるのでは?
A : そうです。安心を得られる場所、もう一度戻りたい時間を過ごした場所などと結びつきます。場所はただの場所ではなく、幸せな時や不幸な時を抱合している場所です。それらの場所がそれらの時間を統合したり凝縮したりしています。その場所に思いを馳せることで、楽しかった記憶を辿ったり、自然に思い出したりします。ノスタルジーの代表的な場所は「実家」です。子供が自分を形成するための安全な避難所であり、母親に守られる「巣」でもあります。
Sekko : 日本語でも「郷愁」という言葉があって、ドイツ語とかぶっている。でも、私にとって「場所」や「実家」の風景や記憶自体はあまり強烈ではない。その中での人間関係と切り離せない。これは日本の都市部に特有なのかもしれない。
日本で昔住んでいたところを訪ねたこともないではないが、駅も駅前も、町並みも、全て「様変わり」している。これは例えばここ数年間の「渋谷」界隈でさえそうで、もう昔何がどこにあったのか分からなくなっている。ノスタルジーよりも、混乱の方が大きくて、周りというものは変化する、こんなものなんだ、という受け入れが自然に身に着いたかもしれない。
それに比べたら、フランスでここ40年以上も住んでいる築140年の町家も、近所の風景も、日本に比べたら変化は少ない。40年以上もあっという間に過ぎ去った感じがあると共に、まだ「最後」ではなく同じ流れの中に住んでいる気もする。
でも、逝去した家族や友人たちもいるし、自分も「高齢者」となったので、このインタビューに何かインスパイアされないかと思って読み始めているわけだ。
(続く)