これは完全にフランス映画なのだけれど、あまりにもフランス映画過ぎて衝撃を受けるほどだった。
タイトルからして分からない。直訳すると「20人の神」だが「vin Dieu」「vain Dieu」という表記もあり得るジュラ地方の俗語の感嘆詞のようだ。
出演者のほとんども主役の青年も組めて地元の人だそうで、コンテ地方の風俗がそのまま描かれている。祭りの様子も独特だし、コンテチーズ(私はほぼ毎日食べている)の製法なども細かく出てくる。
チーズ製造者だった父が交通事故で急死した後で小学生の妹の面倒をすべて見なくてはならないという境遇も、こんな地方の地元の人間で他に親戚とか父の同業の友人とかがいないのが不自然だ。フランスだから行政が妹を引きとってくれることもあり得るだろうし。
だから観ている側の感情移入の可能性がなくて、ただただ「異文化」を眺めている気分になる。ストーリー自体も、自力で仲間と力を合わせて立派なチーズが完成して賞金を得られるというような甘い話でないことが分かる。
妹役の少女の年に似合わないしっかりした様子が逆にリアルで、すべてのストーリーが、シチュエーションの非現実感と役者たちの私生活をのぞき見しているような赤裸々な感じとの間で流れている。
それでも何か惹きつけられて最後まで観たし、「未知の世界」の「未知の人々」の生活や考え方を知ることができたのは嫌ではなかった。
往きの機内で観た法廷ものやら一人芝居やらとは異質で、でも、観て後悔するものでもなかった。