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L'art de croire             竹下節子ブログ

リシュリューの国立図書館 その3

(続きです。)

ミュージアムを奥に進むと、昔ながらの展示室にもつながっている。
(でも、突如としてカメルーン・アーティストのインスタレーションがすんなりと鎮座していたりする。)
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ナポレオンのレリーフで感心したダヴィッド・ダンジェのつくったアルフレッド・ド・ミュッセの肖像メダルの「型」。窪んでいる「型」が写真に撮ると立体的に見えてしまう。興味深いのはナポレオンもそうだったけれど正面の顔ではないところ。
ダヴィッド・ダンジェは文学サロンでミュッセと知り合い、まだ駆け出しだった彼の才能を見抜いてメダルの型を作成したのだそうだ。
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これはルイ15世の部屋と呼ばれるところ。
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 ヴォルテール像の型となった石膏オリジナル。
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12世紀、シャルルマーニュに贈られたというグリフォンの脚を持つ容器。ここに入る
1,46リットルのワインが、当時のワイン量の単位となったとか。
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これはアメジストにシトル(楽器)を持つアポロン像が彫られたインタリオ(凹彫宝石)。聖ドニの聖遺物棺を装飾していた。一世紀イタリアのものだが、12世紀にアベ・シュジェールが採用した。(1629年に墓所は破壊された。)
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そう、このミュージアムには、王家やカトリック教会のものがたくさんあるのだ。
まず、フランス王もカトリック教会も、ギリシャ・ローマの美術品を収集し、その美しさやマチエールを評価して、聖人の墓の装飾や王家用の典礼品の装飾に多用したのだ。そのことが、フランス革命でほぼすべての教会や聖堂が破壊された時も、それら美術的価値、歴史的価値を持つ装飾品が救われるという顛末になった。
多くのものがこの国立図書館に運び込まれた。なぜならここはまさに「王の図書館」であり、革命後すぐに「共和国」の「国立図書館」と改名されたからだ。全ての書物や収集品がそのまま保護されただけではなく、王や亡命した貴族の収集品や教会の宝物が集められたというわけだ。
(明治の日本が「廃仏毀釈」などで貴重な文化遺産を破壊したり、海外に流出させてしまったりしたこととは対照的でもある。)

天井画も美しい。
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聖ルイ王が集めてサント・シャペルに13世紀以来保管されていたすばらしい装丁の福音書などもある。これもすごいと思うのは、フランス革命の後も、ルイ16世はすぐにギロチンにかけられたわけではなく「市民ルイ・カペー」としてふるまっていたことだ。サント・シャペルにある宝物を「王の図書館」改め「国立図書館」に移動させたのも彼だった。ここにすばらしいものが残っている経緯が分かる。
「美」と「政治」を切り離す感性がフランス人にあったのは僥倖だった。
(ルイ15世時代のバロック音楽の普遍的な美を追及している身としては感慨も深い。)
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これは貴族が所有していた10世紀頃のスーフィによる星座の本を13世紀のボローニャでラテン語でまとめたもの。古代ギリシャのプトレマイオスとアラビア-ペルシャ科学とを合わせた星座(ここでは49の星座のイラストがある)体系が広まったことが分かる。
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これは大航海時代以降の異国観察のひとつ。1551-1552年にコンスタンチノープルを旅したニコラス・ド・ニコレイによると思われるデッサンを基にした本のイラスト。
トルコの服装のいろいろ。1568年に、ヨーロッパではまだ製造されていなかったトルコ製の模様の入った紙で作られ。皇太子時代のルイ13世に贈られたものだという。
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これは、1675年に、つくられたヌーヴェル・フランス、つまり新大陸に進出したモントリオールやルイジアナを紹介した地図だ。制作したのはイエズス会の宣教師Bressaniで、1642年にユーロン族への布教に送られた。

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左上には宣教が成功して、キリスト教徒になったユーロン族の家族が祈っている様子。
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それとは対照的に、右下には、1649年に捕らわれた二人の司祭の殉教の様子。他に6人の宣教師が命を落としている。ケベックの先住民の口からこの話は聞くことがなかった。
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1693年パリで造られた天球儀。星座のほとんどは神話の登場人物や動物として描かれている。イタリア語とフランス語も書かれているが、ギリシャ、ラテン語と共にアラビア語をアルファベットで書いた言葉も使われている。当時の天文学の学術語としてアラビア語は認知されていたわけだ。
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これはもっと複雑で精巧な天球儀。1700年ごろ、王の時計職人であるジェローム・マルチノが作成した。地球が中心のプトレマイオスのモデルが採用されている。
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太陽や月、そしてもちろん黄道12星座が天球を回る。
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蟹座はフランス語ではラテン語由来のcancerという言葉が使われているのに、ここではザリガニという意味のエクルヴィスと表記されていて、図も蟹とはほど遠く、ザリガニというかオマール海老のようだ。
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cancerは癌という意味にもなっているが、ヒポクラテスが乳癌が広がった様子を蟹に例えたからだそうだ。ところが、中世ヨーロッパのタロットカードなどでは長い間、蟹ではなくザリガニの姿が使われてきたという。(ここなど)

帰りはショップで、この図書館を特集した美術雑誌を買う。
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ミュージアムが発行している雑誌の最新号。読みでがあった。
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ドーミエの戯画集、ノート、などの小物。
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すでに持っているシュール・レアリスムのカードの新版。
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かなりの広さを見て回るのはけっこう疲れた。ランチに選んだのは図書館の近くのルーヴォワ通りにある韓国レストラン。
タルタルステーキが入っているビビンパの他にプルコギを注文した。
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デザートはゆずのチーズケーキに黒ゴマアイス。
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ノスタルジーにかられる。サンタンヌ通りに住んでいた友人が昔この場所で居酒屋風の日本レストランを開いた。私は依頼されてそのベースになる会社の「雇われ社長」を引き受けたのだ。はじめて公認会計士と話し、帳簿の書き方など教わった。実務はしていないけれど、この時にもらったアドヴァイスはずっと役に立っている。

一階はカウンターで、奥の階段を上がるとテーブル席になっていた。
今はカウンターはないけれど、階段の位置やらは変わっていない。
友人の家で何時間も過ごしたこともあるし、日本食品店や、やはり知り合いのいた免税店にもよく寄った。
もう30年くらい前にその友人がノルマンディの海辺に引っ越していった後は、日本レストランは韓国レストランに変わった。そこに食べに行ったこともある。
もう代替わりしただろうけれど今も韓国レストランのままだったというわけだ。
 
リシュリューの図書館で思いがけない贅沢な時間を過ごし、なつかしい場所で食事するという春の休日となった。

(終わり)

by mariastella | 2025-06-09 00:05 | アート
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