ラジオのインタビューで、Christan Streiff の話を聞いた。
前にこのブログで書いたこの映画の原作の著者である「当事者」だ。
当然かもしれないけれどインタビューで語られた内容は映画よりも真に迫っている。
しかも3年間のリハビリを経て執念で回復した言語能力がすごいので、そこいらの「普通の人」の表現力などとは別世界だ。
54歳でビジネス界のトップに立った男が、全てを失った後でそれ以外の全てを取り戻した。
ビジネス界のトップであった時は、毎日の仕事だけが彼の世界で、一日4,5時間しか眠らず(リハビリの間は一日15時間も寝ていたという。脳の修復は睡眠時に行われるということだ。)、家庭(妻子)のことはまったく念頭になかった。
普通の「ブルジョワ」が親せきや友人たちとオーガナイズするバカンスやら、社会的な承認欲求のためにマウントなどをする世界ともかけはなれていたのだ。
トップであること、20万人の従業員の運命を握っていること、ビジネスの実績を出すことが彼の世界だったのだ。
知人で、このクリスチャン・ストレフには程遠いけれど、長い間、国際的な企業の外国支社のトップを長年続けてきた人がいる。どこでも、その場所では「トップ」だった。リタイアしてから鬱病を発症した。金銭的な余裕も十分で、妻や子や孫に囲まれて悠々自適のリタイア生活なのにどうしてなのだろう、と思っていたけれど、ふと、この人も、現役時代には仕事の世界での「王さま」状態がすべてで、妻子が目に入っていなかったのかもしれない、と思った。
クリスチャン・ストレフのように脳障害でいったんすべてを失ったという試練を経たわけではないから、自分の「能力」は同じなのに前のようには「王さま」ではいられないことを「理不尽」と感じるのかもしれない。あるいは「王さま」以外の役割をこなすことを忘れ、不器用すぎるからかもしれない。
クリスチャン・ストレフは、「人生で成功するとは何ですか」と聞かれて、
自分が地に足のついた状態で生きて学び与えられてきたことを他の人に伝えたり、他の人を助けることに使うことだ、
と答えていた。
人生には多くのトラップが仕掛けられている。
助けたり助けられたりすることを繰り返すしか無事に生きることはできない。