神の掟だって改定できる?

旧約聖書のモーセ五書にある「律法」部分は煩雑で、これは確かに法学者が必要だなあと思う。

キリスト教的に言えば「律法は人のためにあるので人が律法のためにあるのではない」けれど、旧約の神も、最初に想定していないケースがあれば臨機応変に応じた。

たとえば、家長が死んだ時に土地は男子に相続されると決まっていたけれど、ある時、女性がやってきて、男兄弟がいないからと言って、父の男兄弟が相続するのでは氏族は途絶えるとモーセに訴えると、神は娘への相続を認めた。（民数記27,1-9）

しかし、後に、土地を相続した娘が他の氏族に嫁ぐ場合はどうするかと問われて、その場合は相続ができない、相続するなら同族内で婚姻しなくてはならない、と制限を設けた。（同36,1-12）

利害関係者の訴えを聞いて、判断して、新しい規定を加えている。

ここのところを読む限り、ここまで人間の生活全般に律法で介入する神も、ケースバイケースで改定する柔軟性もあるようだ。

「十戒」だって、改訂の余地があるのかも?

（参考に当該箇所を貼っておく。）

27章

>>さて、ヨセフの子マナセの一族で、ヘフェルの子ツェロフハドの娘たちが進み出た。ヘフェルの父はギルアド、その父はマキル、その父はマナセであり、また娘たちの名はマフラ、ノア、ホグラ、ミルカ、ティルツァであった。

彼女たちは、会見の幕屋の入り口で、モーセ、祭司エルアザル、指導者たち、および全会衆の前に立って言った。

「私たちの父は荒れ野で死にましたが、主に逆らって集まった仲間、あのコラの仲間のうちには加わりませんでした。父は自分の罪のゆえに死にましたが、息子がいませんでした。息子がないからといって、どうして私たちの父の名が氏族の中から除かれなければならないのでしょうか。私たちの父の兄弟たちと同じように、私たちにも所有地を与えてください。」

モーセは娘たちの訴えを主の前に持って行った。

主はモーセに言われた。「ツェロフハドの娘たちの言うことは正しい。あなたは彼女たちに、その父の兄弟たちと同じように、相続地を与えなければならない。彼女たちにその父の相続地を渡しなさい。イスラエルの人々にこう告げなさい。ある人が死に、息子がない時は、相続地を娘に渡しなさい。もし、娘もない場合には、相続地を兄弟に与えなさい。<<<<

36章

>>>ヨセフの家系の諸氏族のうち、マナセの子マキルの子であるギルアドの氏族の家長たちが進み出て、モーセとイスラエル人の指導者、すなわち親族の頭たちの前で語って、こう言った。「主はくじにより、その地を相続地としてイスラエルの人々に与えるように、あなたに命じられました。あなたは、私たちの兄弟ツェロフハドの相続地をその娘たちに与えるように、主から命じられました。

しかし、もし彼女たちがイスラエル人の他の部族の息子たちの妻になるようなことがあれば、彼女たちの相続地は私たちの先祖の相続地から取り除かれ、彼女たちの嫁ぎ先の部族の相続地に加えられるでしょう。こうしてその土地は、くじによって割り当てられた私たちの相続地から取り除かれることになります。

また、たとえイスラエルの人々にヨベルの年が訪れたとしても、彼女たちの相続地はその嫁ぎ先の部族の相続地に加えられ、彼女たちの相続地は、私たちの父祖の部族の相続地から取り除かれてしまうでしょう。」

モーセは主の言葉に従って、イスラエルの人々にこう命じた。「ヨセフの子らの部族の言うことはもっともである。ツェロフハドの娘たちについて、主が命じられたことはこうである。娘たちは自分たちの気に入った者の妻となってよい。ただし、自分たちの父の部族の氏族の者に限って、その妻となることができる。

イスラエルの人々に属する相続地が、ある部族から他の部族に移ることはない。イスラエルの人々はそれぞれ、父祖の部族の相続地を固く守っていかなければならないからである。イスラエル人の諸部族のうち、相続地を所有している娘は皆、その父の部族のいずれかの氏族の者の妻とならなければならない。これは、イスラエルの人々がそれぞれ、その先祖の相続地を所有するためである。

相続地が、ある部族から他の部族に移るようなことがあってはならない。イスラエル人の諸部族はそれぞれ、その相続地を固く守らなければならないからである。」

ツェロフハドの娘たちは、主がモーセに命じられたとおりに行った。

ツェロフハドの娘たち、マフラ、ティルツァ、ホグラ、ミルカ、およびノアは、おじたちの息子の妻となった。彼女たちがヨセフの子マナセの家系の諸氏族の者の妻となったので、彼女たちの相続地は父の氏族が属する部族にとどまった。<<<