Q : エリートの生まれ方についてフランスとアメリカの違いはどうですか?
A : 力動的には似ています。けれど国による特色の違いは重要です。
アメリカでは、権力に近づくには財力が大きなファクターです。
フランスでは、伝統的に、学歴、グランゼコールの出身などが、権力への扉を開けるし、大企業のトップへの道も同様です。この違いは決定的です。なぜなら、エリート同士の競争の性格をまったく変えるからです。
フランスでのエリート同士の戦いはアメリカよりも20年遅れています。エリート内部での富や収入の格差は、アメリカ、イギリス、ドイツに比べるとかなり少ないのです。
それからすると、今のフランスでアメリカのような変革を避けることができるように思います。
Sekko : なるほど、フランスでは学歴エリートであれば、ほぼ確実に一定の収入が見込まれるので、エリート同士の中での勝ち組、負け組の差は大きくない。
日本はどうなんだろう。学歴というより、「偏差値」のように何でも数字化されるので、優秀さを示すためには、医者になるつもりがなくても医学部に行くとか、妙な現象があるようだ。政治家の学歴詐称などもやけに非難される。
前にカルロス・ゴーンのことについて書いた時、彼がフランスで最高のグランゼコールを出ているのにそれを肩書に使わないのは、そこに入った時はまだフランス国籍を取得していないので「外国人枠」だったから、その肩書を使うとすぐに非難されるからだと分析した。同じグランゼコール卒業でも、中途から転入という経歴であるなら内部で差別されたりする。フランスでは公的な存在になろうという人が学歴詐称するリスクが大きすぎるのだ。
で、グランゼコールのネットワークと収入や出世の関係は、というと、確かに今は変わってきている。アメリカとの関係やアメリカでの学歴、職歴などが幅をきかせるし、スタート・アップ企業家の「実力」もまた別物だ。
(続く)