Q : この危機のサイクルから逃れるのは可能ですか?
A : 歴史はそれが可能だと私たちに見せてくれています。
1930代のルーズベルトのニューディール政策はアメリカが社会と経済のラディカルな改革によって最悪の事態を回避するのに成功しました。イギリスではチャーチズムの時代(1830-70)(注あり)に、デモクラシーを訴える労働者運動に少しずつ答えることで革命を回避しています。革命回避の方法には三つの段階が必要です。
民衆の貧困化を防ぐための格差是正、国家の正統性の基盤を固めること、そして、何よりもエリートの増産を避けることです。社会がほんとうに必要としているだけの数のエリートを生むために教育システムを対応させることです。
その意味でフランスは有利でしょう。椅子取りゲームで音楽がやむときが暴動につながるような時間を稼げるからです。
チャーチズムを日本語で検索したものを貼っておく。
Sekko : インタビューはここで終わり。フランス向けのもので、フランスにはエリートの狭き門がまだ残っているから「まし」かも、と言っているようだ。
でも、メランションのように教育もあってカトリックの教養も高いようなエリートが、貧困枠の労働者を味方につけるのをやめて移民労働者やイスラム急進派を煽っている現実は倒錯的だ。一方、非移民労働者を煽って味方につけるバルデラのような極右のリーダーたちは、学歴エリートではない。(ルッキズム的には若くてスマートなバルデラの方がメランションより上流に見えるのも皮肉)
どちらにも共通しているのが「煽り」という点で、個人が消費者としてばらばらに生きている今の世界で人々を連帯化する方法がどこでももっぱら「煽り」と、それがもたらす「トランス」になっているということは不安だ。
で、私の結論としては、今読んでみるべきなのは、ピーター・ターチンではなくて、ジェラール・ブロネールの「ポスト・リアリティ」についての最新作だということだ。(この項はこれで終わり)