モルビアン巡礼 その4 マレトロワ ①

サンタンヌ・ドレイからヴァンヌのホテルに直行した翌日は、マレトロワへの日帰り巡礼だ。この日（9/10）は、フランス全土で大規模なマニフェストが予定されていて、交通機関も乱れ、ホテルやタクシーもキャンセルが続いたそうだが、タクシーでの往復（ヴァンヌからマレトロワまで30分ほど）だし、行くところが医療修道院だからストとは無縁だとふんだ。実際、パリはもちろん、ブルターニュでもレンヌやナント等ではゴミ箱に放火したり、警察に石を投げつけたりなどの騒ぎがあったのに、ヴァンヌもマレトロワもまるで別世界のようだった。

どうしてマレトロワに行ったかという理由は前に書いている。

修道院の付属の聖堂。

イヴォンヌ・エメのお墓は修道院に続く病院の裏にある。
墓地の入り口。

老人医療専門の病棟やホスピスなどもある。ここにいたらイヴォンヌ・エメに守られているような気がするから、最後を迎えるなら理想の場所かもしれない、と思わせる静かなオーラが漂う。

修道院付きの聖堂だが、表の堂から一般の人も入れる。いつも誰かが祈っている。

祭壇に向かって左側の翼廊が一般の人の席。前で祈っているのは司祭の1人。

祭壇から奥を見るとオルガンがあり、修道女たちが修道院から直接聖堂に入ってこれるようになっている。

ミサの後、祭壇を片付けるシスター。

記念品売り場に言って驚いた。私はイヴンヌ・エメについての書物が解禁されてすぐの1985年のルネ・ローランタンの本に飛びついて『パリのマリア』の第三章で紹介したのだが、それ以降、堰を切ったかのように夥しい書物が出ている。
今年出て一般書としても話題になったのはこれ。この本が出たことでここに来る人が増えたのではないですか、と質問したら、それとは関係なくここ最近多くの人が来て、8月もいっぱいの人でした、とのことで、この本については「ちょっとロマンセになっていますね」と苦笑いも。ロマンセというのは、話を盛っているというのか、表現の仕方の問題なのかどちらだろう。私がこの本でほおっと思ったのはイヴンヌ・エメの「超常現象」自体はどうしても説明がつかず認めずにはおられないので、「悪魔憑き」だと非難する動きが激しかったことだ。「嫉妬」の渦巻きも怖い。彼女の超常現象は、修道院から出ずに、いろんなところからいろんなものを持ってきたり、誰も入れない寝室のベッドの周りに花がびっしり置かれていたり、なんといっても、パリのゲシュタポに拷問されている時間にメトロに現れて会話したり戦闘機のパイロットの傍に現れたり、幽体離脱やバイロケーションどころか、三分身などの途方もない証言が山のようにある。ただの法悦状態などでなく、明確な目的に従って、八面六臂の活動をしていたので、実際その功労を認められて戦後にドゴール将軍自ら勲章を贈られるなどした。（続く）