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L'art de croire             竹下節子ブログ

シュヴァイツァーのフランス語とレイシズム

9/4がアルベルト・シュヴァイツァーの没後60年ということで、ドキュメンタリーを視聴して、今まで考えもしなかったことをいろいろ知ることになった。

シュヴァイツァーと言えば密林の聖人、オルガニスト、ランバレネ(なつかしい)、ノーベル平和賞、という感じで私の子供時代にはメジャーな「偉人」だった。

サルトルの親戚だということは、サルトルも有名だったので耳に入っていた。

今回知ったのは、彼が基本的にフランス語話者だったということだ。
ランバレネのガボンはフランスの旧植民地で、フランス語が公用語だ。
37歳(1912)の時、ガボンの前に活動を開始したのはコンゴでそこもフランス領だった。

シュヴァイツァーはアルザス生まれで、生まれた時は普仏戦争の後でドイツ領だったけれど、そもそも境界地帯で、バイリンガルで、彼の父が牧師として説教をしていた教会はカトリックの典礼にも使われていたという。

彼がバッハについて書いた書物も、初版はフランス語で後からドイツ語版を出したのだから、書くのも完全にバイリンガルで、ベルリン生まれのユダヤ人である妻との手紙はドイツ語がほとんどだが間違いもあるという。

第一次世界大戦の間は、ドイツ人なのにフランス領のガボンにいたことでスパイと疑われて1917年にフランスに送り返され収容されたが捕虜交換で解放された。
1924年に単身でランバレネに戻った時は病院が荒れ果てていたのだが、イギリス人医師なども使って新しくした。
1919年に子供が生まれたのでヨーロッパに残った妻のエレーヌは1930年にアメリカで夫の人道活動について講演をして回り、寄付を集めて新しい病院の資金を集めた。(妻と娘はナチスの時代にはランバレネに「亡命」してきた。)

でも、そもそも、どうしてブラックアフリカに向けて「使命感」を発したのかというのだろう。
コルマールにいた時に見た黒人の彫刻に大きな印象を受けたということで、そのコレプリカまで作らせている。「黒人」を「人類みな兄弟」の「弟」だと見なして、彼らの「成長」や「教育」に使命感を持っていたらしい。
ガボンでは基本的にフランス語だが、黒人にはすべて「tu」という親称だけを使っていたそうで、あらゆる点で「上から目線」は明らかだった。憐れみはかけてもリスペクトはなかった。一昨日の記事「無償の専制」そのままだ。

ドキュメンタリーでは赤ん坊の時にシュヴァイツァーの施設に引き取られた双子の1人の証言があった。母が産褥死したので父親が双子をシュヴァイツァーに託して、病院の近くに住むことにしたという。双子を両腕に抱えたシュヴァイツァーの写真は慈父のように使われた。

ところが双子が15歳になった時に、スウェーデンの養母と養子縁組をさせることをシュヴァイツァーは独断で決めた。父親はそれに怒って子供たちを引きとった。

実の父や子供たちの「意志」を確認するとか同意を得るなどはまったく考えなかったのだ。

日本で人気が出たのは、核兵器反対のオピニオンリーダーの一人になったこともあるだろう。アインシュタインと懇意で、核兵器禁止の運動に誘われたが断っていた。アインシュタインの死後、積極的にかかわることになったという。

90歳まで長生きしたが、19世紀に教育を受けた人だから、いくらユニヴァーサリズムを標榜してもパターナリズムから抜け出ることができなかったのだろう。

こういう時いつも思うのだけれど、日本が「植民地」にしたことで攻められる朝鮮や満州やらは、たとえ「西洋化=近代化」では日本に後れを取ったとはいえ、基本的に、文化的にはずっと日本の「兄」だった。漢字も経典のある宗教も「大陸」から来たものだった。人種的にも同じだし長いスパンで混血もしている。だから、シュヴァイツァーやヨーロッパ人にとってのアフリカ、特にブラック・アフリカとの関係とは根本的に違う。

第二次世界大戦後に米軍に占領された時はアメリカの議会でマッカーサーが「日本人の精神年齢は12歳」と言ったというのが有名だ。
歴史や文化を顧みても、「アメリカ人に言われたくない」と思うが、マッカーサーのような人は自国内での黒人差別も普通に容認していたという気がする。

シュヴァイツァーが日本について「被爆国」という以外にどういう印象を持っていたのか知りたいところだ。(1959年の日本のドキュメンタリー番組でのシュヴァイツァー病院には日本人医師も勤務していたから、「先進国」扱いではあったのかもしれないが‥)





by mariastella | 2025-10-20 00:05 | 雑感
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