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L'art de croire             竹下節子ブログ

同時多発テロから10年

これを書いているのは11/13の夕方。TVでは10年前の同時多発テロの犠牲者の追悼式が中継されている。バタクランでコンサートをしていた歌手も特別出演する。
10周年を前に、当時のステージで突然銃撃の音がして人々が倒れ、叫ぶ映像が何度も流された。

いわゆる「13日の金曜日」、ということで日付は忘れられないけれど、事件の年からちょうど10年経ったと言われて、はるか昔のような、ついこの間のような、不思議な感覚がする。

当時の様子をブログで検索すると、毎日のように記事かあり、あらためて、なるほどそういえばそうだったと感慨がある。
ごく初めの記事をリンクしておく。次々とたどっていくと、今でも大切なことが見えてくる。テレビなどの記念番組では犠牲者の家族の苦しみや生還できた人の体験談、トラウマ、罪悪感などの人間ドラマが中心でショックを受けるが、当時の第三者の言葉の検証はないので、自分の残したいろいろな記録が役に立つ。

月イチの「健康ブログ」でも2015年11月にはテロの話があった。
そう、この後、2016年に両裸眼が正常になったので、このブログを毎日書くようになったのだ。後半年、10年目ということで、ブログの毎日更新をやめて、膨大になった情報を整理して執筆に専念したいと思っている。

TVの中継を見終わった。当時の大統領のオランドや首相のバルス、内務大臣カズヌーヴなどが並んでいる。テロの犠牲者の記念公園でのセレモニーの背景になるのは教会で、絵になっている。ただし、この教会はパリ市庁舎の近くの4区にあるサン・ジェルヴェ教会で、当時も今もパリ市長であるイダルゴによる政治的戦略のような感もある。
実際にテロの中心になったのはパリの東側地区で、バタクランにも近いサン・アンブロワーズ教会ではテロの直後から犠牲者のためのチャペルを設け終日開放した。宗教の有無にかかわらず、多くの人が祈りを捧げ続けて、この10年間ろうそくの灯が途絶えたことがないそうだ。
テロリストは自爆テロでも天国に直行出来て処女に囲まれるなどというイスラム過激派の図式に対して、すべての人々が祈りを通して支え合い連帯するという形のユニヴァーサリズムが根づいているのは慰めになる。

そして、演出がすばらしく、昨年のオリンピック・パラリンピックの開会式や閉会式よりも質が高いし、なんというか、この追悼をこのような形で、ユニヴァーサリズムと自由とを強調してまとめあげる手腕は、フランスの最強の部分がまだ健在であることの証明のようにさえ見えた。
この夏、日本も被爆80周年であったし、大震災やら原発事故を振り返る節目の年にもいろいろな集会などがあるのだろうけれど、インパクトの質の差はそのまま文化の差に起因しているのだろうか。

犠牲者のアソシエーションを立ち上げた二人の男性のスピーチも、パリ市長イダルゴのスピーチもよかったし、最後をまとめるマクロンの「演技力」の冴えも際立っていた。内政においては、いまやぼろぼろで右からも左からも叩かれている最悪の大統領だ。(外交も、前日には、フランス国籍も持つアルジェリアの作家ブアレム・サンサルが、アルジェリアで禁固されているのをフランスの外交力では助けられず、ドイツの大統領が仲介してドイツの病院に移送されたことで、フランスの立場がなくなったばかりだ。)
それなのに、スピーチの内容(これは優秀なライターがいたのだろうが)もよかったし、最近は何をしゃべってもフランス人の神経を逆撫でしているようなマクロンが、フランスを体現しているかのように見えるほど堂に入っていた。
スピーチの最後の方は政治的メッセージだったが、犠牲者や生存者への言葉として、「11月13日に意味がある、とは言えない、でも11月14日には意味がある、」というところは気に入った。悲劇の当日に対して慰めの言葉はないが、「翌日」からをどう生きるかに意味があるのだ。

(実際は、現在はテロリストが若年化し、SNSによって過激化し個別化して、10年前こののような指揮系統は存在しなくなっていると言われる。フランスの内部では、10年前よりもイスラムスカーフをつけている女性が多いし、イスラム化も進んでいる。この式典では「イスラミスト」という言葉がタブーのようにほとんど使われなかった。同じ年の1月のシャルリーエブドのテロは、「表現の自由」に向けられたものだったが、11月の無差別テロはフランス人の生活を狙ったものだった。このことに対するレジスタンスとして私は次の年にフィルハーモニー前の野外やホールでの200人弦楽演奏に参加したのだった。
一方で、マクロンは、今や国内の危険因子より、ロシアを仮想敵国とした「戦争」の可能性を強調することで「権威」を維持しようとするかのようなタカ派ぶりで、これからの先行きが思いやられる。)




by mariastella | 2025-11-28 00:05 | フランス
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竹下節子が考えてることの断片です。サイトはhttp://www.setukotakeshita.com/
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