ウクライナ戦争が終焉せず、また冬がやって来る。
ウクライナを支援するため、ロシアによるフランスの攻撃にそなえるため、と、赤字財政のフランスは軍事予算をアップ。どこかの国と似ている。
しかし、そもそも、ロシアには西欧征服の力も意思もない。
ウクライナ戦でも、もう数年に渡って国境線で戦っているのに、「ロシア領」を確定しないのは、ロシア領を広げればその国境線の警備の軍隊と、それを統括する現地の行政組織の整備が必要だが、ロシアにはその人材確保ができない。ロシアの失業率は1%に満たないという。
しかもロシア軍の多くはウクライナにもルーツを持っている。オリガルヒの汚職のベースも共通している。
そうこうしているうちに、ロシア兵を含めてすでに何十万人という死者が出ている。
「キリスト教ルーツのヨーロッパ」の人口減は深刻さを増すばかりだ。その状況で戦力増強を歌うEUとロシアの間で「ヨーロッパの内戦」が繰り広げられているようなものだ。
ウクライナ戦ですら国境を確定するのを躊躇するロシアが、核保有国でもあり距離があるフランスを攻める確率などゼロに近い。もし「その気」になれば、ロシアからの核ミサイルは発射後16分でパリや主要都市を全滅できる。フランスが核で「応酬」したとしても、防衛は不可能なのだ。
各国がそれぞれに都合のいい「プロパガンダ」を振りかざして国際情勢を動かす。
ロシアに対しては長い間、「ピョートル大帝の遺言」という「嘘」がロシア内でもヨーロッパでも歴史を動かしてきた。ピョートル大帝はロシアを東方正教の中心地にしたキリスト者であり、啓蒙の世紀の親ヨーロッパで、ロシアをヨーロッパに近づけた。
そのピョートル大帝が1725年に没した後、1744年に「ピョートル大帝の遺書」という膨大な文書が現れた。それが実は側近のタカ派によって書かれた「偽書」であったことが判明したのは19世紀末だったという。
その内容は、ロシアによる世界征服(全ヨーロッパの征服)の方法についてだ。
偽書のピョートル大帝は、「自分はロシアという小川を受け継いで、大河に成し遂げた。私の子孫はその大河を海として、貧しくなったヨーロッパを救うだろう」という未来図を描いている。
具体的な方法としては、まず、ヴェルサイユとウィーン(つまり当時の西洋を二分するフランス王とハプスブルク家)に対して別々に、共に世界帝国を分けよう、と申し出る。どちらか一方が賛成すれば、そちらと組んで、もう一方を滅ぼす。その後で残った方を征服する、という戦略だ。
この「偽書」のたどった歴史は複雑だが、フランスでは何百ページにもわたる「翻訳」が出版されて、それがナポレオンによる1812年の「モスクワ遠征」の根拠となったという。
この「偽書」のイメージは根強く、EUやマクロンの軍事経済、軍事政治のベースになっているかのようだ。
政治におけるプロパガンダには「真偽」など問題にならないということだろう。