トランプ大統領がベネズエラ大統領を拉致してから、いろいろな言説が飛び交い、私に意見を求めてくるまでいる。
ここではその都度のニュースに反応する言葉を避けているのだけれど、少しだけ。
(これを書いているのは1/12)
まず、個人的には、なんといっても、レオ14世の反応を知りたかった。
彼はアメリカ人のメンタリティにも、中南米のメンタリティにも理解が深いという稀有な人だ。(フランシスコ前教皇はアルゼンチン出身で、当然ながら南米の歴史というバイアスがあっただろう。)
レオ14世は、長くペルーで宣教にあたり国籍まで取得した人だ。
ベネズエラは、実際は大統領の独裁だったとしても、「共産主義」を掲げている国だ。
共産主義は無神論に拠っていた。
けれども、中南米の「革命」は「解放の神学」にも支えられていたように、今でもベネズエラの全国民の73%がローマ・カトリックに属する。
過去の宗主国スペインの影響であり、アフリカ経由の呪術の影響も受けているが、カトリックのアイデンティティは色濃く、彼らにとっての「首長」はレオ14世でもある。
レオ14世は何よりも国民の安全と安穏を祈っている。トランプ大統領の措置を弾劾したり容認したりなどの政治的判断などはしない。
ベネズエラの司教評議会も「国民」第一で、冷静でいることを呼びかけ、争いの勃発による犠牲者が出ないことを最優先している。
カトリック信者の耳に確実に届く。
アメリカ大陸における植民者の宗教ルーツが及ぼす影響は侮れない。
トランプにとってのアメリカは「神の国」で、それを「西半球」全部に広げるというレトリックが、実は「権力」と「カネ」を追及するものだということは自明だ。とはいえ、そのベースにいつも「神」が使われているなら、アメリカ人教皇レオ14世が平和と友愛を目指す使命を果たす余地はある、と期待したぃ。
今でも、アメリカ人の27%はカトリックで、大学(主にイエズス会系)の四分の一がカトリック系だ。けれどもイギリスの植民地時代はカトリックが禁止されていた。カトリックの典礼などが摘発されると死刑にさえなったという。当時のカトリックはカナダで争っていたフランス、中南米を制するスペインなど「敵の宗教」だったからだ。独立した時点では、カトリックは数十人しかいなかった。
ワシントンとも親しかったというイエズス会のアイルランド人John Carrollが、アメリカの独立憲章によって保障された信教の自由のもとで司教となった。(それでも当初の政府にはアイルランド人には禁じられているポストがあったという。)
現在も、コミュニタリアニズムという「パッチワーク」国家であるアメリカでは、カトリックといっても、各共同体によって帰属意識や考え方は違う。
イギリス人の貴族でアメリカに来てカトリックに改宗したグループもあるし、フランス革命で逃げてきたカトリック貴族もいる。アイルランド系カトリックとフランス系カトリックは長い間敵対すらしていた。カナダから移動してきたフランス人コミュニティでは第二次世界大戦の頃までは典礼でフランス語が使われている場所があったという。
それでも、多様なプロテスタントとは違って、アメリカのカトリックにとってローマ教皇が首長であることは自明であり、19世紀には3度も公会議を開いて国内のカトリックの歩調を合わせようとしてきた。19世紀末にレオン13世がアメリカニズムを弾劾したのは有名だが、ヒスパニック移民は別としても、ケネディ大統領やバイデン大統領が生まれたように、今のアメリカ人にとって、「大統領」と「ローマ教皇」は二大権威と見なされている。
「布教」を特化するプロテスタントの福音派の影響は大きくなっていて国際的にもいろいろな問題があるとはいえ、やはり、フランスにもルーツを持つアメリカ人のレオ14世が登場して弱者の擁護と連帯、分かち合いを訴えることに望みを託したい。