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L'art de croire             竹下節子ブログ

高市首相「タケシ」から「タカイチ」へ

高市早苗さんが日本で初の首相になって以来、そのことをどう思うか聞かれることがあった。

うーん、フランスでは、はじめての女性首相がミッテラン大統領の下のエディット・クレッソンで、日本人を揶揄した発言で頭の悪さを露呈したマイナスイメージがある。

その後は大統領選挙でエヴァ・ジョリ、マルティーヌ・オーブリー、セゴレーヌ・ロワイヤル、マリー・ル・ペンらが票を伸ばし、パリ市長のアンヌ・イダルゴも有名。エヴァ・ジョリやイダルゴは成人してからフランス国籍を取得したことで、その辺の感覚が日本やアメリカと違うことについて過去に書いたことがある。


さて、昨年高市さんが首相になってからと、今回の突然の解散と総選挙で盤石の地位を築いてからの変化について。

最初、フランスのニュースでも名前を呼ばれることが多くなったのだけれど、綴りをフランス語読みしただけの「タケシ」と発音されることがままあった。

フランス語は二重母音をきらうので音便が発生して、「AI」は「エ」となるからだ。そしてTakaichi のchiはフランス語ではシ(shiではなくもっと空気を含んだ音だが)となるので、「タケシ」というわけだ。「高市」とあまりにもかけはなれているので気になる。

で、まず読み方の話。

O +U」は「ウ」と発音される。前にどこかに書いたけれど、昔フランス語学校の同じクラスに通っていた大内さんと井上さんという日本人が「Ouchi」「Inoue」では「ウシ」と「イヌ」(最後のeは発音されない)と呼ばれるので困ったと言っていたのを思い出す。(「Ooutchi」と書くようになったのだったっけ。)


で、2/8の選挙で自民党が圧勝したことで、翌日にはフランスのメディアでも報道されたのだけれど、今度はさすがにどこでも「タカイチ」と発音していた。日本にいる特派員との連携もあるからだろう。たんに紙に書かれた名前を読んでいるわけではないことがよく分かった。(高市さんの印象についてはこの後の記事で)


(付録)二重母音について昔、サイトの記事でこういうものを書いていた。読み返しておもしろかったのでここにコピー。


「(‥‥)そして政治とは関係ないのだが、私が今のところゴーリスト路線で消極的に支持してるUDFのフランソワ・バイルーBayrouの発音だ。バイルーという人と、ベイルーという人と2種類いる。ラジオやTVのアナウンサーですら二つに分かれ、私はどちらか知りたくて悶々としているのだが、誰も気にしてないのである。女優のナタリー・Bayeはバイで、ベイとは聞かない。バロックバレーのクリスティーヌ・Bayleはアングロサクソンぽく「ベイル」でOK。では、Bayrouはバイルーかベイルーかどっちかと思って周りのフランス人に聞いても、BAYだから、どっちでもありうるねとか平気で答えるのだ。 

私が、でも固有名詞なんだからそのどっちかに決まってる、どっちなんだ!と叫んでも、誰も気にしないで、好きなほうを使ってるのだ。バイルーのほうがやや優勢だが、今でもベイルーとはっきりいうアナウンサーも一般人もいる。普通、日本人がフランス語を習う時、Y=i+i と習う。だからcrayon=crai+ion でクレイオンとなる。その伝で行くとBayrou はべイルーなのだ。

フランス語は一般的に重母音を嫌って、A+I=エ、  O+U= ウ、 E+I=エ、 A+U=オと音便を起こす。だから、アイとかエイは、両方ともあまりフランス語的でないのだ。

そこで、多分、フランス人は、アイとエイの違いに敏感ではないのかもしれない。日本語でも重母音の音便がある。日本人は小学校以来あまり気にしないが、フランス人のための日本語学習にはちゃんと、E+I=長いE O+U=長いO と書いてある。

しかし私たちはほんとにそれを守っているだろうか? 確かに「恵子さん」は「けいこ」と書いて「けーこ」と発音される。しかし松田聖子を「せーこ」じゃなくせいこちゃんと発音することはあるように思う。「大英帝国」は「だいえーてーこく」となるはずだが「だい」のA+I という2重母音につられて「だいえいていこく」と言ってしまうかもしれないし、「定刻に来てください」という時なんか「てーこく」というと間延びして定刻っていう感じがしないんで「ていこく」と言いそうな気もする。

だとしたら、今私がバイルーかベイルーかで悩んでるのは、日本にいる外人が、「佐藤栄作」の発音は、「さとーえーさく」のはずなのに、アナウンサーによっては「さとーえいさく」と読んでいて、日本人は誰も悩んでないというのに似たものなんだろうか。

田中角栄が「かくえー」と聞こえたり、「かくえい」と聞こえたりりして悩む外人がいるのかもしれない。司馬遼太郎なんかも、「りょーたろー」のはずだが「りょうたろう」と言っても「りょうたろー」と言っても、自然に言えば、日本人同士ならひょっとしてなまってると思われても間違ってるとは指摘されない気がする。すごくつまらない話だが、この一点だけでも、もしバイルーが大統領になったら、ちょっとうっとうしいなあと思ってしまうこの頃だ。」(2007年の記事)


by mariastella | 2026-02-20 00:05 | フランス語
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竹下節子が考えてることの断片です。サイトはhttp://www.setukotakeshita.com/
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