フランス政治の風景とキリスト教購入するつもりはなかったが、無料のPDFで読める『マリアンヌの肖像』をついつい読んでしまった。クリスチャン・コンバスの「背中に剣を指されたマリアンヌ」だ。
出版を断られた作品だが、さもありなんと思うし、こんなものを読んでいたら今どきの「極右」だと思われかねない。 「アングロサクソンの野蛮な新自由主義」に対して「キリスト教とヒューマニズムに立脚したヨーロッパの伝統」を称揚するというテーマだからだ。でも、日本人の私には逆によく分かる部分がある。もちろんナショナリズムの部分ではあり得ないが。
ほぼ同世代の作者が語るフランス社会の変遷は興味深いし、ヌウイー・シュル・セーヌのブルジョワや貴族たちの微妙な出身の違いと、公立名門校かカトリック名門校か、地方出身かの違いなどが描かれ、その差によって68年の5月革命をどう生きたか、ジスカール、ミッテラン、シラク、サルコジ、オランドとどう関わって来たかなどの証言はリアルだ。考えてみれば、今まで、サルトルやニザンの世代の証言は読んでも、同世代の記録は読んでいなかった。ヌウイーのブルジョワ世界とは少なからずの因縁があるので新たな見方が加わった。そして最終章のハンガリー、これも、個人的に深い関係がある。ハンガリーがカトリック国として出発した時の言葉は印象的だ。これがあるから、ハンガリーは共産主義体制の中でもカトリック・アイデンティティを保ったし、それはポーランドも同じだった。ハンガリー動乱のことや、上智大学のネメシェギ神父とのいろいろなご縁も懐かしい。 最後の部分をGoogle翻訳すると、こうなる。 >>>興味深いことに、1000年にイシュトヴァーン王とゲルデルト司教の指導の下、ハンガリーが建国されたのは、まさに正反対の懸念からだった。王の言葉。 「何世紀にもわたって大陸をさまよった古代部族、アルパードの子孫である我々は、空間を貪り食い、資源を略奪し、人々を虐殺する蛮族のような振る舞いをやめよう。もはや幸福を追い求めるのではなく、ドナウ川のほとりに定住し、幸福を引き寄せよう。我々自身、そして隣人との間には、征服の必要性を、発明、創造、建設、そして理解の必要性へと置き換えるような関係を築こう。我々が住むことを選んだ場所を美しくし、また分け合おう。規則、法律、制度、儀式を増やすことで、法律、詩、演劇のあらゆるニュアンスを我々の言語に込めよう。」<<
と、共感できる言葉だ。 もっとも、その宣言は次のように締めくくられる。
>>キリスト教を受け入れよう。キリスト教は、私たちの周囲で、同時に抑制力、推進力、ヒューマニズム、そして国家間の統合力であることを証明してきた。私たちの部族特有の遺伝的特徴、特に繊細さとニュアンスに富んだ言語から生まれる知性を磨こう。私たちの世界、私たちの家族に属することは依然として困難だが、この努力が実れば、栄誉と誰もが羨む地位という報いが与えられるだろう。私たちは文明人となり、私たちと共に文明人となることを望まない人々を拒絶しよう。<<
ということで、著者の称揚するヨーロッパ民族主義に通じることになる。 キリスト教を受け入れさえすれば、他文化からの移民でも「栄誉と誰もが羨む地位という報い」が得られるという「論功行賞」みたいな言い方では、せっかく弱者に寄り添う普遍的な道徳をベースにしたキリスト教から乖離してしまう。
うーん、前の記事に書いたように、ピーター・ティールが「西洋、西洋」「西洋文明」といって、ヨーロッパとアメリカをまとめていたことに反感を持つヨーロッパ人も少なくないわけだけれど、だからと言って、「ヨーロッパ至上主義」を唱えるのは、ヨーロッパがもはや「終わった」という見方も広がっている中で、ますます現実と乖離してくるなあと思う。 それとは別に、フランス学士院にピーター・ティールを招いたドルバル女史が、こう言っているのを聞いた。 >>今ロシアや中国が新しい帝国を作ろうとしていると騒いでいるのはおかしい。帝国とはヨーロッパだったのだ。そのヨーロッパが植民地を手放した、帝国の恩恵を受けられなくなった旧植民地国から帝国に逃げてくるのが移民だ。今のヨーロッパは亡命帝国になっている。<< つっこみどころもありそうだ。日本人としてもいろいろ考えさせられる。
by mariastella
| 2026-03-09 00:05
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