日本とフランスを何度往復しても、日本から戻るとすぐにフランスの感覚に戻れないことがひとつある。それは「何を着ていくか」ということだ。
日本では「天気予報」でいつも「朝晩は冷えますのでお出かけには上着が一枚あるといいでしょう」のようなアドヴァイスがついている。
4月の終わりから5月にかけては日本もフランスも(東京もパリもということだが)天候が不順で汗ばむほどの温度や冷たい風などでなかなか先が読めなかった。
で、フランスに戻ってから、最初に午後から夕方にかけてメトロで外出したのが5/11だった。6日に戻ってからずっと肌寒い。朝は6度くらい、昼も15度くらいだった。でも、暖房を入れる気分になれない。5/11の外出はバロック・バレーだから、帰りは汗ばむだろうと分かっている。でも、風があって寒い。5月中旬でさすがにダウンジャケットは着ていけないだろうと思って、薄手のジャケットを着ていった。
出かけた時は寒かった。
で、道行く人を見て、そうだ、ここはフランスだった、と思いだした。
ダウンジャケット、厚手のコートにマフラーの人と、半そでTシャツやランニングシャツみたいな人が同じ通りを歩いている。カップルでも季節感がばらばらだ。
そういえば、表参道や原宿には今年は「西洋人」観光客が多くて、肌寒い日でも半そでに短パンという姿の人もいくらでもいたのを思いだした。「外人」だものね、というので、特に違和感をおぼえなかった。
もう40年も前、9月の日本で、暑いので白い半そでブラウスで出かけようとしたら、母から「もう9月なのにおかしい」と止められて着替えたことがある。別に誰かと会うわけでもなく単にショッピングに行くだけだったのに。
「多様性」が広がると、自分が何を着ていくかについて、「他人の目」、「目立たないように」という意識はどんどん薄れる。それでも、日本のテレビの天気予報はなぜかいつも二人組で、次の日の服装や洗濯日和かどうかなどまでアドヴァイスしてくれるのだ。
フランスでは誰にも何も言われないし、視線も感じない。
この差が基本的に半世紀も続いているのって、思えば、すごい。