人気ブログランキング | 話題のタグを見る

L'art de croire             竹下節子ブログ

西宮の「聖イエス会アンネのバラの教会」を訪ねる

仁川の修道院の前庭に、オレンジ色の薔薇の花が咲いていた。
「アンネのバラ」という種類だそうだ。
西宮市の甲陽園にプロテスタントの聖イエス会アンネのバラの教会というのがあるそうで、連れて行ってもらうことになった。
アンネのバラとは、『アンネの日記』のアンネを記念してベルギー人の園芸家がアンネの形見としてつくった品種だそうだ。

アンネのバラの教会。
西宮の「聖イエス会アンネのバラの教会」を訪ねる_c0175451_06364240.jpeg
薔薇が咲き誇っている。最高のタイミングだったようだ。
西宮の「聖イエス会アンネのバラの教会」を訪ねる_c0175451_06332592.jpeg

ここにある薔薇は、1972年のクリスマスにアンネの父オットー・フランク氏から贈られたものを接ぎ木して増えたものだそうだ。
西宮の「聖イエス会アンネのバラの教会」を訪ねる_c0175451_06330227.jpeg
アンネのブロンズ像もある。
西宮の「聖イエス会アンネのバラの教会」を訪ねる_c0175451_06340254.jpeg
そもそもなぜオットー・フランク氏かというと、1971年の4月、国際平和を訴えるイエス会のアマチュア合唱団である「しののめ合唱団」がイスラエルで公演した時に、スイスから旅行中のフランク氏(当時82歳)と出会ったのだそうだ。

私も少女の頃に『アンネの日記』を読んだ世代だ。でも、その経緯や、父親については何も知らなかったし記憶にもない。この下のwikipwdiaの記述を読んで、もともとドイツの資産家、実業家だったのだとあらためて知った。

父親が娘の日記を出版したことや別のヴァージョンがあるなどの話題は時々目にしたけれど、彼が第一次大戦に従軍したドイツ兵だったなどは知らなかったし、この時代に普通に西欧化していた裕福なユダヤ人のネットワークがナチスに以下に翻弄されたのかをあらためて思う。

アンネのバラの姉妹株というのもある。薄い色の花びらに赤い筋の入ったものは、赤を殉教のシンボルとして、聖コルベのバラと名付けられた。コルベ神父は長崎で司牧して、アウシュヴィッツでは、ユダヤ人囚人の身代わりとなって処刑されたことで有名だ。(白い花びらのものもあり、「祈り」というネーミングだそうだ)
西宮の「聖イエス会アンネのバラの教会」を訪ねる_c0175451_19581664.jpeg
聖コルベのバラ。
西宮の「聖イエス会アンネのバラの教会」を訪ねる_c0175451_06343675.jpeg
西宮の「聖イエス会アンネのバラの教会」を訪ねる_c0175451_06350449.jpeg
西宮の「聖イエス会アンネのバラの教会」を訪ねる_c0175451_06362074.jpeg

聖堂。正面のダビデの星が目に入る。祭壇にはユダヤ教の燭台メノーラー(これもフランク氏から寄贈されたという)も置いてあるし、ヘブライ語を刺繍した布もある。
西宮の「聖イエス会アンネのバラの教会」を訪ねる_c0175451_06370397.jpeg
西宮の「聖イエス会アンネのバラの教会」を訪ねる_c0175451_06372246.jpeg
西宮の「聖イエス会アンネのバラの教会」を訪ねる_c0175451_06374016.jpeg
教会付属のアンネ・フランク資料館には、オットー・フランク氏所有のアルバムから転写したさまざまな写真が展示されている。
西宮の「聖イエス会アンネのバラの教会」を訪ねる_c0175451_06382362.jpeg
左から2人目がアンネ。
西宮の「聖イエス会アンネのバラの教会」を訪ねる_c0175451_06384771.jpeg

姉のマルゴとアンネ。
西宮の「聖イエス会アンネのバラの教会」を訪ねる_c0175451_06390463.jpeg
フランク氏から贈られたアンネの遺品。このような遺品が展示されているのは世界で四ヶ所しかないそうだ。
西宮の「聖イエス会アンネのバラの教会」を訪ねる_c0175451_06394542.jpeg
西宮の「聖イエス会アンネのバラの教会」を訪ねる_c0175451_06400959.jpeg

フランク氏の遺品。手前のハンカチはアンネが父オットーのイニシャルを刺繍したもの。
西宮の「聖イエス会アンネのバラの教会」を訪ねる_c0175451_06413826.jpeg
服に縫い付けることを義務付けられたダビデの星。
西宮の「聖イエス会アンネのバラの教会」を訪ねる_c0175451_06491653.jpeg
アンネの日記からの抜粋の言葉も並んでいる。
アンネは早熟で、差別のない平和な世界のために戦うことを決意していた。
その中で、当時の状況を見て、「人間には破壊と殺人の本能がある」と書いた部分がある。14歳の少女にこんなことを言わせたのがつらい。
私は、破壊と殺人が本能だと思ったことがない時代と場所で生きた。
弱い者をかばい、守る、という本能があるからこそ人間は存続してこれたのだと思っていた。破壊や殺人は、「自由意志」が「嫉妬」や「欲望」などさまざまな要因で「生きる、生かせる、という本能」を裏切ったアクシデントなのだと思ってきた。
アンネが生きていたら、そして今の世に戦争状態にある国でアンネと同じように思っている少女たちがいるなら、じっくりと話し合ってみたいテーマだ。

この教会にはユダヤ教やユダヤの歴史についての多くの書物もあった。
アンネのバラという名を冠している教会は世界でここひとつなのです、と牧師さんがおっしゃった。
それにしても不思議だ。イエス会という名もはじめて聞いた。
すると、日本発祥のプロテスタントで、もともと「イスラエルの真実の友」ということがアイデンティティの基礎にあるようだ。イエスがイスラエルが再臨することを信じるという点は「福音派」に通ずるのだろう。戦後に生まれ、今は日本に20の教区、100の教会、5000人の信者がいるということで、教育機関、司牧者養成機関もあるようだ。
ユダヤ教とキリスト教の「救い」における最終的な一致を信じるのだから、このアンネのバラ教会の仕様も不思議ではない。
それにしても、ユニークな場所だ。ユダヤ教と密な関係にある福音派でも、ここまでのユダヤ教仕様はあり得ないのでは? 日本ならではのエキュメニカルで、何でもあり、という包容力のある国ならではの現象かもしれない。今のネタニヤフ政権とトランプ政権のやり方とは真逆だ。アンネや父のオットーが今のイスラエル政権のやり方を見たら怒りを嘆くとともに怒りを覚えるかもしれない。




西宮の「聖イエス会アンネのバラの教会」を訪ねる_c0175451_19585625.jpeg
教会前のバラ園の隅に、落ちた花びらを集めた籠があって、自由にお持ち帰りください、と書いてある。仁川カトリック教会の行事でこの花びらを使えないかとF さんが牧師さんに頼んだことで、交友が始まったのだという。

貴重な体験をさせていただいた。


by mariastella | 2026-05-28 00:05 | 宗教
<< 菖蒲池、心斎橋、代々木上原 シスター相川との再会 >>



竹下節子が考えてることの断片です。サイトはhttp://www.setukotakeshita.com/
以前の記事
2026年 07月
2026年 06月
2026年 05月
2026年 04月
2026年 03月
2026年 02月
2026年 01月
2025年 12月
2025年 11月
2025年 10月
2025年 09月
2025年 08月
2025年 07月
2025年 06月
2025年 05月
2025年 04月
2025年 03月
2025年 02月
2025年 01月
2024年 12月
2024年 11月
2024年 10月
2024年 09月
2024年 08月
2024年 07月
2024年 06月
2024年 05月
2024年 04月
2024年 03月
2024年 02月
2024年 01月
2023年 12月
2023年 11月
2023年 10月
2023年 09月
2023年 08月
2023年 07月
2023年 06月
2023年 05月
2023年 04月
2023年 03月
2023年 02月
2023年 01月
2022年 12月
2022年 11月
2022年 10月
2022年 09月
2022年 08月
2022年 07月
2022年 06月
2022年 05月
2022年 04月
2022年 03月
2022年 02月
2022年 01月
2021年 12月
2021年 11月
2021年 10月
2021年 09月
2021年 08月
2021年 07月
2021年 06月
2021年 05月
2021年 04月
2021年 03月
2021年 02月
2021年 01月
2020年 12月
2020年 11月
2020年 10月
2020年 09月
2020年 08月
2020年 07月
2020年 06月
2020年 05月
2020年 04月
2020年 03月
2020年 02月
2020年 01月
2019年 12月
2019年 11月
2019年 10月
2019年 09月
2019年 08月
2019年 07月
2019年 06月
2019年 05月
2019年 04月
2019年 03月
2019年 02月
2019年 01月
2018年 12月
2018年 11月
2018年 10月
2018年 09月
2018年 08月
2018年 07月
2018年 06月
2018年 05月
2018年 04月
2018年 03月
2018年 02月
2018年 01月
2017年 12月
2017年 11月
2017年 10月
2017年 09月
2017年 08月
2017年 07月
2017年 06月
2017年 05月
2017年 04月
2017年 03月
2017年 02月
2017年 01月
2016年 12月
2016年 11月
2016年 10月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 07月
2016年 06月
2016年 05月
2016年 04月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 07月
2015年 06月
2015年 05月
2015年 04月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月
2013年 11月
2013年 10月
2013年 09月
2013年 08月
2013年 07月
2013年 06月
2013年 05月
2013年 04月
2013年 03月
2013年 02月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 11月
2012年 10月
2012年 09月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 06月
2012年 05月
2012年 04月
2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
2011年 11月
2011年 10月
2011年 09月
2011年 08月
2011年 07月
2011年 06月
2011年 05月
2011年 04月
2011年 03月
2011年 02月
2011年 01月
2010年 12月
2010年 11月
2010年 10月
2010年 09月
2010年 08月
2010年 07月
2010年 06月
2010年 05月
2010年 04月
2010年 03月
2010年 02月
2010年 01月
2009年 12月
2009年 11月
2009年 10月
2009年 09月
2009年 08月
2009年 07月
2009年 06月
2009年 05月
2009年 04月
2009年 03月
2009年 02月
2009年 01月
2008年 12月
2008年 11月
2008年 10月
2008年 09月
2008年 08月
カテゴリ
検索
タグ
最新の記事
スペイン・バロック展  その3
at 2026-07-16 00:05
スペイン・バロック展 その2
at 2026-07-15 00:05
スペイン・バロック展 その1
at 2026-07-14 00:05
酷暑に思う
at 2026-07-13 00:05
すてきな女性!
at 2026-07-12 00:05
けだまだま
at 2026-07-11 00:05
ネコとネズミ
at 2026-07-10 00:05
猫の目
at 2026-07-09 00:05
「食べてはいけない!」
at 2026-07-08 00:05
『神秘の目--スペイン黄金の..
at 2026-07-07 00:05
エムバペとジダン
at 2026-07-06 00:05
2026 FIFA ワールド..
at 2026-07-05 00:05
死刑囚から歴史学博士に
at 2026-07-04 00:05
「猛暑」第二派の「最終日?」
at 2026-07-03 00:04
『坂本龍一 ピアノへの旅』
at 2026-07-02 00:05
ブログ読者の方々へのお礼とお..
at 2026-07-01 00:06
「推し活」とアディクションと..
at 2026-06-30 00:05
猛暑と推理小説
at 2026-06-29 00:05
レバノンはどうなるのだろう
at 2026-06-28 00:05
「教え」と「育て」
at 2026-06-27 00:05
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧