Patrice de Plunkett のブログによると、イギリスのゴードン・ブラウンは、近く、カトリック信者がイギリスの王座につくことの禁令を解くつもりらしい。
これは、1688年の名誉革命以来の変革だそうだ。
名誉革命でカトリック王が禁止されたのは、カトリックであったスチュアート家の王位奪還を阻止するためだった。今はスチュアート家は絶滅したそうだから、当初の目的はもう意味をなさない。日本人の目から見ると、17世紀の法律が今も生きているということ自体が驚きで、宗教〈というよりキリスト教党派争い?)の確執の根深さに今さら感心する。19世紀までは、カトリックは公職にもつけなかった。
ブラウンはスコットランドの長老派の牧師の息子だし、今のイギリス王室にはカトリックがだれもいないから、この突然の変革は、王室の誰かの「隠れカトリック」をかばってるのかもしれない。ブレア元首相が、首相を辞めたらさっさと、奥さんの宗旨であるカトリックに改宗したことは記憶に新しい。禁令が解けたらだれがカミングアウトするのか楽しみだ。
この名誉革命でカトリック国フランスに亡命したのがジェームズ2世である。そして、その前のチャールズ2世は、カトリック・シンパだったが、新教徒に屈して、アイルランドのオリヴァー・プランケット大司教の逮捕を許してしまった。彼は、証拠なしの陰謀でっちあげによって吊るされ、解体され焼かれたそうだ。今は殉教聖人になっている。
ん? プランケット大司教?
では、パトリス・ド・プランケットも、ひょっとしてアイルランドから亡命したカトリックのプランケット家の子孫なんだろうか。だとしたら、彼が若い頃に左翼王党派だったり、今もローマ教皇ファンであることも納得がいく。
ヨーロッパの宗教や歴史は込み入っている。宗派は姻戚の指針であり、権力の継承とセットになっている。アングロ・サクソン国ではアメリカも含めていまだにそれがはっきり見えている。いや、はっきり見せないといけない。だから、隠すことも必要になる。
今のデンマーク女王と結婚したフランス貴族は、王室がルター派と決まっているので結婚前に改宗した。外交官だった。アンリという名はヘンリクとなり、国も名も宗教も仕事も変えたのは一大決心だったと語っている。(この夫婦は、でも今でもすごく仲がいい)
フランスは共和国の原則上、関心も薄いし何の障害もないが、サルコジもカルラもカトリック系だから、離婚してようが不倫してようが、ローマ教皇が来てもなあなあで大丈夫である。建前は別として、教義とかの問題じゃないのだな。でも「隠れ」信仰者というのは逆に、教義にもこだわっていそうだ。奥が深い。