L'art de croire             竹下節子ブログ

2018年 02月 01日 ( 1 )

竹信三恵子さんの「日本の母親=押し入れ説」

講談社の広報誌『本』の12月号で、愛読していた竹信三恵子さんの『「母親神話」の国、日本』が最終回だった。


この雑誌には同時に下重暁子さんの『その結婚、続けますか?』という連載もあって、どちらもフェミニズムの流れとして読んでいたのだけれど、いつも、そのアプローチの違いの大きさにとまどっていた。


竹信さんはジャーナリストとあり、その抑制的で客観的な筆致から、30代か40代のアカデミックな感じの人だと思っていた。

下重さんはもう80代だそうだが、結婚生活についてのいろいろな例を挙げているにもかかわらず、自分語りとの区別がつかず、ただの回想記なのか何かよく分からない。「反芻する恋がある限り、私は年をとらない。少女にもどれる。」とか、幸せな人だ。


竹信さんの記事の方は説得力があり具体的な提言もある。正直言って母親たちの、「内なる檻」「自虐のルール」などの話も、新世代「草の根封建オヤジ」の話も、あまりにも私にとっては異星の出来事みたいで実感がないのだけれど、とにかく竹信さんの論理の筋道がきっぱりしていて小気味よい。

で、はじめてネットで検索してみたら、私より少し若いが同世代の人だと知って意外だった。

しかも、記事ではまったく私生活を感じさせないのに、夫君を50代で海難事故で亡くして、『ミボージン日記』という私生活全開のような本を出されていることも知った。夫君が1950年生まれの灘中灘高から東大というのも、早生まれでなかったら東大入試中止の年だったはずだから、70年入学だとしたら、その年の一浪してきた灘高出身の友人たちの思い出があるので親近感がわく。

ネットで竹信三恵子さんのインタビューや講演記事を拝見して、すてきな人だなあ、と思った。


それにしても、フェミニズムの言説は難しい。

特に今の時代では、どこのどんな人が発言しているのかすぐに分かってしまう。


その人の経歴や年齢や外見や肩書についての先入観が、言説を読むときの邪魔になることが多い。


「先入観とのイメージが違う」ことがプラスになる場合もマイナスになる場合もある。


たとえば貧困者の自立支援をしているサポートセンターの「もやい」の中心メンバーである湯浅誠さんとか稲葉剛さんだとかがどちらも東大出身と聞くと、いくらでも他の出世街道に進めたのに偉いなあ、などと思うけれど、


フェミニストのエリザベト・バダンテールがフランス屈指の金持ちでエリートの夫、娘や孫に囲まれてパリの一等地に住んでいることを知った時に「こんな人に普通の女性の悩みが分かるのだろうか」と思ったりする。


アンチエイジングなどやめてありのままがいい、などと主張する人が生まれつき肌がきれいで色白の美人である時と、肌や髪がぱさぱさで年よりも老けて見える「オバサン」であるのとでは、たとえ同じことを言われても受け取られ方が違う。


フランスで同性愛者たちのトーク番組を見ていた時、格好いいカップルが出てくると嬉しいが、ぱっとしない人が話すと、「異性に相手にしてもらえない人が同性愛にはしる」などと思われそうでいやだ、と思った。


聖職者や修道者でもそうで、いい家庭の出で姿もよく高学歴の人が独身の誓いを立てたら何か崇高なものに見えるが、その正反対の人が立派な志を語ったら、この人、他に道がなかったんだろう、などと思ってしまう。


このような反応は、プラスにしてもマイナスにしても等しくすごくプリミティヴで差別的で、どうしようもなくくだらないと分かっているのに、多分、多くの人に脊髄反射的に刷り込まれている偏見だ。


そういう先入観のみじんもない人を私は知っている。

私にはある。

偏見がなく本質的なものをまっすぐ観ることのできる人は存在するが、そんな人には、偏見のほんとうの卑しさなど想像もつかないだろう、

私は少なくとも、偏見の根づき方や克服の仕方やその深刻さをいろいろと考えざるを得ないという点だけでは、よかったかもしれない。





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by mariastella | 2018-02-01 00:05 | フェミニズム



竹下節子が考えてることの断片です。サイトはhttp://www.setukotakeshita.com/
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